広報こしがや

1997年04月15日

No.277 裸のつきあいでわかる子どもの腫瘤 土屋 博之 

子どもとの裸のつきあいの重要性は、最近の家庭内暴力や学校内のいじめ問題だけの専売特許ではありません。本稿では本当の裸のつきあいでわかる子ど もの腫瘤(しゅりゅう)についてお話ししたいと思います。  14歳の女子中学生です。本人は1年前よりお腹が大きいことに気付いており、来院時にはあたかも妊娠末期といった具合でした。巨大な良性の卵巣嚢腫(ら んそうのうしゅ)で全摘出来ましたが、破裂や悪性を考えるとゾーッといたします。14歳女児という年齢や家庭風呂の普及で、1人で入浴し他人の目に異常な お腹に気付かれることなく経過したと考えます。  次は、11歳の女児です。4日前に下腹部痛で虫垂切除術をうけたが、CT検査で卵巣嚢腫が疑われ当科入院となりました。患児はまだ生理がなく、膣部は膨 隆し処女膜が完全に閉鎖されていました。病気は膣・子宮溜血腫で、処女膜切開術のみでおわりました。これまで両親の離婚後お父さんに育てられ、会陰部の異 常や生理に関する相談の機会がなかったようです。  次は4歳の男児です。2カ月前よりお腹が痛いと訴えており、食べ過ぎと様子をみていましたが、入浴中にお腹に硬い物が触れると来院されました。腎の悪性 腫瘍で、全摘出来ましたがリンパ節に転移を認めました。子どもがお腹の痛みを訴える時は直接お腹を触ってください。いつもと違うお腹の状態が判るはずで、 早期診断・治寮のターニングポイントとなります。  最後は2歳の男児です。1カ月前よりチンチンが痛いと訴えていましたが、陰茎や包皮に異常がなく様子をみていました。その2週間後にお父さんが入浴時に 陰嚢部腫脹(いんのうぶしゅちょう)に気付きましたが、年末であり来院したのは1月6日でした。睾丸悪性奇形腫で睾丸腫瘍の全摘術がなされました。赤チャ ン言葉での訴えには広い意味の解釈が、またお父さんが異常に気付いたのですから早く専門病院を受診することが、必要であったと思われました。  以上、「裸のつきあいでわかる子どもの腫瘤」について、最近の例を挙げ、子供に対する日ごろのご両親の観察の大切さを述べさせていただきました。子ども は子どもなりの表現で必死に訴えているわけですから、見逃しのないように的確に異常をキャッチすることが大変重要と考えます。

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