広報こしがや

1997年07月01日

No.282 脇腹に突然激痛が-帯状疱疹? 佐藤 勲

50歳代後半になった4年ほど前のことである。勤務の帰り道、突然石わき腹にえぐられるような激痛がはしった。そのときの痛みは数秒と続かずおさまって しまった。しかし数分後同様の痛みが起こり、その後は刺すような、やけるような痛みが数分ごとに断続的に続いた。痛みのごとに立ち止まって、わき腹を押さ え自然にウーッという声を発していた。直感的に、帯状疱疹だなと思った。帯状疱疹は高齢者に多い病気と言われており、ついに自分も高齢者の仲間入りをした か外このことを長い間、体の奥底の神経に潜んでいたウイルスのやつが教えてくれたというわけか。激痛がはしるたびに、そのことをいやおうなしに思い知らさ れた。しかしやっかいなことになったなあ。これをこじらせると仕事どころではないし、生活も痛みに支配されてしまう。なんとかしなければと思い、自宅に着 くやいなや薬箱にあった鎮痛薬を飲んだ。数時間は痛みを忘れていた。しかしそんな甘い簡単な痛みではなかった。痛みの発作ごとに坐薬やら内服薬やらを手当 たりしだいに使ってみた。坐薬のおかげで夜は眠ることができた。翌朝、ウイルスのやつが手荒く電撃痛でわき腹を刺して起こしてくれた。こんなことで仕事を 休むわけにはゆかない。ポケットに鎮痛薬をしのばせ、自宅を出る前に坐薬をさし、内心ビクビクしながら職場に向かった。数日後、案の定、右わき腹に赤いあ わ粒状の水疱が肋骨(ろっこつ)に沿って並んで出てきた。約1週間は朝、坐薬1本挿入、昼、鎮痛薬内服、就寝前、また坐薬といった生活が続いた。10日 後、わき腹の水疱も乾燥し、落ちてきれいになった。痛みもどういうわけかまったく治まってしまった。まさにラッキーのひと言であった。  かくいうわたしは疼痛(とうつう)専門の医者で、外来では痛みに苦しむ帯状疱疹の患者や、それをこじらせてしまった帯状疱疹後神経痛の患者の治療に当 たっているが、自分で体験してからは患者の痛みに対して実感としてその痛みを分かち合うことができるようになり、今ではあれはど憎かったウイルス様に感謝 しているしだいである。

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