広報こしがや

1997年10月15日

No.288 自己輸血について 鈴木 美登利

自己血輸血とは、手術時の出血に際し秦自分の血液だけでまかなう紳ことを意味します。昔からあった方法ですが、この4~5年の間に急速に普及してきまし た。というのは、血液を介して起きる感染症のC型肝炎、B型肝炎、エイズなどいに対する認識が深まったことやこれから先にどんな感染症が出現するかわから ないという危機感もあるからです。これら以外のメリットは、ほかの人からもらって輸血すると、アレルギー反応、発熱、免疫成立による抗体獲得、効果的治療 のない輸血後GVHD(Graft Versus Host Disease)などの合併症をきたさないことにあります。主たる病気の治療がうまくいっても、輸血による合併症にかかってしまったら悲劇で す。  自己血輸血の方法は主に3種類あります。最も一般的に行われている貯血式は、予定手術の数週間前から、予想出血量にあった血液量を計画的に採血し、手術 時まで保存し、術中の出血に対して輸血するという方法です。回収式というのは、手術中に出血したら、専用の機械を用いて吸引回収したものを輸血して返す方 法です。ほかに希釈式という方法があります。これら3つの方法を単独あるいは組み合わせて、症例に合わせて行っているのが現状です。  では、だれでも望めば使える方法かという疑問がわいてきますが、基本的には、治療回復不能な貧血、採血にともなう副作用が危惧される場合はできません。 また、患者さんによっては、鉄剤、造血用の薬剤を使用しながら採血、貯血していきます。こうして採血した血液を目的別に分離、保存している間にもトラブル は発生しますから、自己血を行っている患者さんに、ほかの人からの血液を輸血するということは非常に残念なことになります。そして、この思いが医療技術を 高めています。

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