広報こしがや

1997年12月15日

No.292 癌(がん)予防のための子宮癌検診、肺癌検診 佐藤 英章

広報こしがやで何度となくお知らせされている生活習慣病(成人病)検診について、その採取された細胞の良性・悪性の診断をしている病理医の立場から少し詳しくお話ししたいと思います。
越谷市では老人保健法に基づいて成人病検診を行っています。そのなかで病理の対象となっているのは子宮癌(がん)検診と肺癌検診です。子宮癌検診では 30歳以上の女性を対象とし、子宮内腔表面よりブラシや綿棒で細胞を採取し検体とします。また、肺癌検診では40歳以上の方を対象に、痰(たん)のなかの 肺より剥(は)がれ落ちた細胞を検体とします。これらの検体は、受診された医療機関より検診センターなどに運ばれます。この細胞をガラスに塗り付け、顕微 鏡にて観察をします。観察は細胞検査士が数百ないし数千ある細胞の中から異形細胞を見つけだし、良・悪性の最終診断は細胞診指導医(病理医)が行います。  1年間で子宮癌検診、肺癌検診ともに癌と診断される人はおおよそ1000人に1・5人です。癌は進行癌と早期癌とに分けられ、それによって大きく予後が 異なります。進行癌では5年生存率(癌の治療を受けて後5年間生存する割合)は60パーセント以下であるのに対し、早期癌では5年生存率は約97パーセン ト以上とほとんど100パーセントに近い生存率を示しています。早期癌とは癌発生の初期のもので、癌であっても初期のものであれば手術、放射線治療などで 完全に癌を撲滅できる可能性が非常に高いのです。では、癌を早期の状態で見つけるにはどうしたらよいのか。それを最大の目的としているのが成人病検診なの です。
毎年の定期検診を行うことで癌になる前の異常を発見することができ、その段階で生活習慣(例えば、喫煙、塩分の過剰摂取など)の改善により癌にならない ように予防することができるのです。癌予防のため必ず成人病検診を受けましょう。できれば、年1回といわず年2回以上受診されることを望みます。

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