広報こしがや

1998年02月01日

No.294 胃がん縮小手術と胃切除後障害 佐々木 勝海

最近がんと闘うなという本が出され、患者さんたちが迷っているというお話をよく耳にします。それは手術によって必要以上にたくさんの臓器をとりすぎると いう点と、抗がん剤治療が問題になっており、術後の障害や副作用が多く出て患者さんが苦しんでいるということのようです。しかしながら、早期胃がん治療の 点に関しては最近では縮小手術が大流行で、なるべく胃を残し、かつ充分な治療をしていこうという方向になっております。
胃がんは治る病気です。ただし、適切な治療をしなければなりません。また早期に発見するという努力も必要です。そうすれば、現在私たちが行っている内視 鏡的粘膜切除術や、腹腔鏡下あるいは開腹下胃局所切除術という、簡単で、患者さんにあまり負担がかからず、術後の障害が少ない方法で胃がんの処置が出来る ことになります。これは、がんが胃の一番内側の粘膜内にあるという条件が必要ですが、粘膜より少し深く入ったがんでもリンパ節に転移していなければ、こう いう治療も可能と考えられます。そのためにも、少なくとも年1~2回の胃内視鏡検査で早期がんを発見する努力が、医者と患者双方に必要と思われます。しか しながら、全部が全部そういう時期のがんが発見されるとは限りません。不幸にもその時期を通り越した胃がんに対しては、胃切除とリンパ節郭清術を行いま す。この手術のために胃切除後障害が起こってきます。
胃切除後障害とはいったい何でしょう。食後の冷や汗、動悸(どうき)、めまい、全身のだるさや眠くてたまらないといった全身症状や、食後2~3時間以内 に出てくる腹痛、下痢、腹満や腹の不快感といった腹部症状がいわゆるダンピング症状です。そのほかにも、胸焼けなどの逆流性食道炎や食事量が不十分な小胃 症状、栄養障害、貧血、残胃炎、骨障害や胆石症などの障害が起こってきます。最近では、そういう障害を予防するためにいろいろな術式が工夫されており、そ の発生頻度は減少していますが、通常生活になるまでには少し時間がかかるようです。
そうならないためにも、さあ明日にでも胃内視鏡検査を受けましょう。

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