広報こしがや

1998年09月01日

No.307 食中毒 萬屋 隆

食中毒の原因の多くは、微生物が食品中に混入しておこる細菌性食中毒です(まれだがウイルス、原虫もあります)。これにはいくつかの異なった発症機序があります。
1つ目は、生きた菌が腸に定着・増殖し、菌自らが腸管の上皮細胞や組織内に侵入して、腹痛や下痢、嘔吐(おうと)などの症状を引き起こします。病巣が広 がれば潰瘍(かいよう)になり血便が出るようになります。この代表が動物・ヒトの腸管からのサルモネラ属菌(サルモネラ、チフス菌、パラチフスA菌)、赤 痢菌などがあります。サルモネラ菌属は鶏の卵の表面だけではなく内部にもいることがあります。
2つ目は菌が直接、体に害をもたらすものではなく、体に入った菌によって作り出された毒素が体を攻撃するものです。これには、海産魚介類が原因である腸 炎ビブリオ、動物の腸管内からの毒素原性大腸菌、腸管出血性大腸菌(O-157)等があります。これらの毒素は、タンパク質合成阻害毒、腎臓の働きを低下 させる細胞毒、神経を侵して脳炎症状をもたらす神経毒など特性を持ってヒトに攻撃します。
3つ目は食品に付着し、そこで作り出された毒素が体内に入って初めて食中毒を起こすものです。土壌の中に存在するボツリヌス菌、黄色ブドウ球菌の毒素が これにあたります。黄色ブドウ球菌は鼻腔やのど、ひび切れした手、化膿(かのう)巣に存在します。ボツリヌス菌毒素は猛毒で神経から筋肉への命令を阻害す るため、いろいろな筋肉が麻痺(まひ)し、呼吸ができなくなり死に至るのです。黄色ブドウ球菌の毒素は下痢、嘔吐を引き起こします。これは極めて熱に強い 毒素ですので注意が必要です。
食中毒の予防は、調理の前には必ず指輪、時計等を外して手洗いをすること。牛肉や魚を扱ったときも、そのつど流水で手指を洗う。手や指を怪我していると きは調理の中止、まな板、包丁をこまめに洗う。冷蔵庫は寿司詰め状態にしないこと、扉の開閉は要領よく行いましょう。冷蔵庫を過信しないことも大切です。
家族や友人など複数で似たような消化器症状が現れたら、食中毒の可能性があります。食中毒は意外な結果を招くこともあるのです。特に痙攣(けいれん)、むくみ、尿閉(にょうへい)などが見られたら、直ちに病院へ行かなければいけません。

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