広報こしがや

1998年12月01日

No.313 インフルエンザ 當摩 正美

昨年は小児の死亡者まで出した香港でのトリ型ウイルスによるインフルエンザが話題となり、わが国への襲来が心配されました。別名・流行性感冒とも呼ばれているこの病気は、ご存じのようにインフルエンザウイルスの飛まつ感染(空気伝染)でまん延します。
このウイルスにはA・B・Cの3型があり、大流行をみるのはA型とB型です。特にくせ者のA型はトリ・ブタ等動物と共通の株もあるなど種々の亜型があ り、毎年少しずつ病原性を変えたウイルスが流行します。そのため一度かかっても完全な免疫(抵抗力)はできず何度でも罹患(りかん)します。また突然全く 別の亜型ウイルスが流行の主流となると、そのウイルスに免疫の無い方が多く、世界各地で猛威を振るい国際的流行(スペインかぜ・アジアかぜ等)となりま す。
鼻やのどの粘膜にウイルスが付き増殖し炎症を伴う急性の呼吸器の病気を「かぜ症候群」といいます。インフルエンザも普通のかぜもほとんど同じ症状で「か ぜ症候群」の一つですが、同一ではありません。したがって、症状で一般のかぜとの見極めは難しいことも多いのです。ただし典型的なインフルエンザ感染は、 高熱・全身倦怠感・小児では消化器症状など全身症状を伴うので流行中は症状での推定診断も可能です。確定診断は、のどのぬぐい液からウイルスを証明するこ とですが、詳しい亜型までの検査は一般の医療機関では行っておりません。
治療ですが、特効薬はなく、もっぱら対症療法にとどまります。続発的な肺炎で毎年多くの方が亡くなっており、「かぜのようなもの」と軽視せずかかったら 安静をとり保温・保湿のうえ良質の栄養と水分の補給にも心がけましょう。予防に勝る治療無しとのことでワクチンがありますが、あらかじめ次の流行を予測し た型のもとで造られるワクチンでの効果の判定は難しく、実際流行するウイルスといかに合致するかが、カギとなります。有効期間は3カ月ほどとされています が、体力の低下した慢性疾患の方や幼小児・免疫力の衰えた老人・受験を控えた方はぜひ受けるべきです。生ワクチンや鼻粘膜へ噴霧など新しいタイプも研究さ れており、より簡易な、より有効性の高い予防法が期待されます。

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