広報こしがや

1999年07月15日

No.327 人工透析 樋口 和博

腎不全に対して行われる治療法で、腎臓の働きを人工的に行う治療法を人工透析といいます。腎不全には急性と慢性がありますが、慢性が90%以上を占めているため、慢性腎不全について説明いたします。
数年以上の経過で、腎機能低下が徐々に進行し腎不全になった状態を慢性腎不全といいます。慢性腎不全になってしまうと腎機能は回復不可能になります。慢 性腎不全の原因は、慢性糸球体腎炎、糖尿病性腎症、腎硬化症、嚢胞腎(のうほうじん)等です。腎不全とは腎機能が正常の30%以下になった状態をいいま す。この状態では不要な老廃物、水分、ナトリウム、カリウム等が排せつされず、徐々に体内に蓄積していきます。
更に腎不全が進行し、腎機能が正常の10%以下になると、尿毒症と呼ばれる症状が出てきます。症状としては、食欲低下、はきけ、口臭、むくみ、血圧上 昇、頭痛、動悸(どうき)、息切れ、疲労感、全身のかゆみ、不眠、足のしびれ等です。一般的には腎機能が正常の10%以下(血清クレアチニン値が8㎎/殊 以上)になると、透析療法を始める必要があります。
透析療法には血液透析(HD)と腹膜透析(CAPD)があります。現在最も普及しているのは血液透析で、透析施設で行われます。血液透析では、血液を体 外に取り出し、ダイアライザー(人工膜)を通すことによって、血液中の不要な老廃物や余分な水分をろ過し、血液を浄化します。きれいになった血液は再び体 内に戻されます。血液の取り出し口が必要なため、シャントと呼ばれるものを前腕に作ります。1回の透析は3~5時間です。最初の1カ月くらいは入院が必要 ですが、退院後は週2~3回通院で透析を行います。
一方、腹膜透析は家庭や職場等で、患者さん自身が行います。CAPD(連続携行式腹膜透析)では、腹腔内に透析液を注入し、腹膜を介して、血液中の不要 な老廃物や余分な水分を透析液に移行させ、その液を体外に取り出して血液を浄化します。透析液の出し入れをするため、カテーテルというものを腹部に埋め込 みます。24時間連続した透析で体への負担が少なく、透析液の交換は1日4回行います。
最後に、透析を受けるうえで、大切な事に食事療法がありますので、よく勉強する必要があります。現在、わが国の慢性透析患者数は約18万人です。なお、医療費については、自己負担がほとんどかからないような、社会保険制度があります。

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