広報こしがや

1999年09月15日

No.330 不安と抗不安薬 池田 恭子

抗不安薬という言葉は、聞きなれないものかもしれません。しかし安定剤とお聞きになると何となくおわかりになると思います。作用が穏やかであるこ とから、緩和精神安定剤(マイナートランキライザー)とも呼ばれますが、現在では抗不安薬という名称が一般的です。この薬は、精神科、神経科、心療内科は もちろん、多くの診療分野で使われています。
わたしたちの社会は高度に発達し、多過ぎる程の情報に満ち、社会全体の仕組みも複雑になっています。その結果、人々は多くのストレッサー(ストレスを引 き起こす刺激)にさらされています。ストレッサーとなりうるものは、身体的なもの、社会的なもの、個人をとりまく環境や条件、対人関係と広い範囲に及びま す。長期間多くのストレッサーを受けた結果しばしば漠然とした不快な心の状態、いわゆる不安状態におちいることがあります。さらに身体上何らかの問題が生 じることもあり、心身症と呼ばれます。
それでは不安というのはどんな症状なのでしょうか。何となくおちつかず、何となく恐ろしい、じっとしていられない不快な感じで、人に当たり散らしたり、 不眠になることもあります。手指のふるえ、口の渇き、動悸(どうき)、手掌の発汗、頭痛など多彩な症状がみられます。このような不安状態に対して抗不安薬 が使われます。
抗不安薬として一般的なべンゾジアゼピン系統の薬は、脳の特定の部分に作用してその働きを抑え、自律神経を調節し不安や緊張をゆるめます。不安に対する 作用、鎮静催眠作用、筋肉の緊張をとる作用、てんかんに対する作用などを持っています。同じ系統の薬でも薬の特性から、ある薬は抗不安薬として、ある薬は 睡眠薬として使われます。また、それぞれの薬の作用時間にも長短があります。医師は、薬剤の特徴を生かし症状に合わせて処方します。これらは比較的安全性 の高い薬剤ですが、年齢(特に高齢者)や妊娠や併用薬や飲酒について考慮しなければならないため、その情報を医師に伝えることが必要です。また、中毒にな るとかやめられなくなるとか心配する方がいますが、おそれることはありません。多量で長期間服用の場合には依存症が生じることもあり、医師と相談してくだ さい。また、中止するときには、同様に医師と相談のうえに減らしながらやめていただくことが必要です。

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