広報こしがや

2000年08月01日

No.345 下肢静脈瘤 大橋 重信

あなたは立っているとき下肢の静脈がむくむくと膨れ上がっていませんか。あなたご自身でなくとも、周りにそのような人を見うけることがあるかと思いま す。これは大抵の場合静脈瘤です。どうしてこんなになってしまったのか、スカートも履けないし素足で人前にも出られないと悩んでおられる方や、足がむくん だり、重かったり、痛みや傷でお困りの方はいませんか。
静脈は圧力が小さく壁も薄いので足を下げると膨れて、持ち上げるとぺしゃんこになります。普通の場合、静脈は内腔に弁があって逆流を防止しているので、 立っていても血液は筋肉の収縮などで上の方へ上って行って心臓にもどることができるのです。しかし弁が壊れると逆流を生じ血液が滞ってしまいます。血液の 流れが悪くなると次第にむくみが出て、足が重くなり、色がついたり潰瘍(かいよう)ができたりするのです。さらに炎症や感染を起こして静脈炎を合併するこ ともあります。静脈に沿って赤くはれたり痛んだりし、ひどくなると熱が出たり、内腔に出来た血栓が肺に飛んで肺塞栓(そくせん)を起こし命にかかわること もあります。静脈の弁は一度壊れると治りませんから、放って置くと長時間の立ち仕事などで圧力が加わったりした場合、健康な弁も壊れてしまいだんだんひど くなります。したがって早い時期の治療が必要なのです。
治療の第一歩は圧迫することです。ちょうどよい圧力で圧迫すると、静脈は狭くなって血液はスピードをあげて流れ、滞りません。圧迫はつま先から悪いとこ ろまで全部を均等にする必要があり、医療用にそのように作られたストッキングが販売されています。これは弾性ストッキングといって履くと下肢が軽くなりま す。
しかし圧迫だけでは静脈瘤は治癒しません。静脈瘤を治すためには悪くなった静脈を切除しなければなりません。切除には普通、入院手術が必要です。しかし 比較的軽いものに対して、最近では硬化療法という方法が行われています。これは悪くなった静脈に薬を注入してから、圧迫してつぶしてしまう方法です。比較 的簡単に、入院しないで外来でできます。合併症も少なく、健康保険も使えるので広く行われるようになりました。ただ細かな注意が必要なので血管外科の専門 の医者のいる病院で行っています。一度ご相談されることをお勧めします。

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