広報こしがや

2000年12月01日

No.349 ドックで発見された脳動脈瘤 丸木 親

Q脳ドックを受診したのですが、脳の血管に動脈瘤(どうみゃくりゅう)があると指摘されました。
破裂して、くも膜下出血を起こす可能性があると聞いてとても心配です。手術を受けなければいけないでしょうか?
A脳の動脈が風船のようにふくらんだ脳動脈瘤は、破裂すると脳の表面や脳内に出血をきたし(くも膜下出血)、およそ半分が死亡すると言われています。生ま れつきの素因に動脈硬化、高血圧、喫煙習慣などが加わって、多くは中年以降になり発症します。脳ドックにおける破裂していないと思われる脳動脈瘤の発見率 は、受診者の4~6㌫と言われていますが、二親等以内に脳動脈瘤が破裂した方がいれば、8~14㌫と高率になります。
我々の施設でも近年、未破裂脳動脈瘤の患者さんの手術例が増加しており、脳外科医の立場からも合併症を最小限にしなくてはならない予防的手術なので、非 常に精神的な重圧となっています。よくご理解いただきたい点は、たとえ瘤があったとしても、必ず破裂するものではないという点です。出血する確率を正確に お答えすることは現時点では難しいのですが、少ないものでは年間0・5㌫、多いもので3㌫と統計もさまざまです。また、年齢、瘤のできる場所や、形によっ ても破裂の危険性に違いがあり、何よりも手術となった場合、手術しやすい場所かどうか、合併症が起きやすい場所かどうかの判断も大切です。判断には極めて 専門的な知識が要求されます。近年では血管内からカテーテルで瘤のなかにコイルを充填(じゅうてん)する頭を外科的に開かない手術も発達しています。
動脈瘤の手術を受けるほうがよいのかどうかはドックでとられたフィルムを持って、脳神経外科専門医に相談し、十分情報を得られてからお決めになる方がよいと思います。この際、違った施設にも受診され、もう一人の脳外科医の意見も参考にすることもよいでしょう。
現在、未破裂の動脈瘤の危険性について各国の脳外科医も動き出したばかりですので、正確な個人個人の情報をもとにした危険率が判るようになる日も近いと 考えています。なお、破裂してしまった脳動脈瘤の手術、血管内手術が必要なのは再破裂の危険性が非常に高いのでやむを得ないことです。

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