広報こしがや

2001年02月01日

No.351 反復性中耳炎 吉田 悌友

Q2歳の男の子ですが、1歳ごろより何度も中耳炎を繰り返しています。どうしてなのでしょうか。
Aほとんどの中耳炎症例では、副鼻腔炎が根底に存在します。鼻汁に存在する細菌が、鼻と耳をつなぐ耳管を経由して炎症を起こします。乳幼児は成人と比べ て、この耳管の角度が水平に近く、感染を起こしやすいのです。感染症を起こす原因は、防御側の免疫機能の問題と攻撃する側の細菌の強さのバランスによりま す。中耳炎の多くが、免疫学的に未熟な乳幼児期に罹患します。起炎菌に対する免疫学的な感染防御が十分になされないためです。
急性中耳炎の難治化、反復化に移行する症例が増加している原因のひとつに、乳幼児期からの、集団保育が考えられるとの報告もあります。両親の共働きの増加に伴い、低年齢での集団保育は今後増加するものと思われ、今後の課題と思われます。  中耳炎の重要な起炎菌はインフルエンザ菌、肺炎球菌、モラキセラ・カタラーリス等です。そのなかでも近年、抗生物質の効きにくい、多剤耐性肺炎球菌(PRSP)による小児の症例の報告が増加し、大きな問題となっています。
中耳炎の治療の原則は、炎症の原因となる微生物の増殖を抑えるために、感受性ある抗生剤の適正な使用と、鼓膜切開を施行し、中耳腔内に貯留した膿汁の排 せつを行い病原巣を清潔にすること、中耳炎の発症の原因である鼻汁の吸引除去を行うことが必要です。症状の一時的な改善のため、保護者が抗生物質の投与途 中で中止してしまう症例があり、このことも反復性中耳炎が増加する原因のひとつと考えられています。
鼓膜切開を必要以上に恐れる保護者がいますが、排膿することにより疼痛の軽減と、難治化を防ぐ有効な手段だということを理解してください。鼓膜切開は専 門医による適切な判断のもとに行えば、繰り返し行っても問題になることはありません。急性期には連日の処置が必要となることもあります。反復性中耳炎の治 療には、抗生物質の投与だけでは不十分で、必ず耳鼻科的な処置が必要です。治療が長期化することも多いので、保護者も大変でしょうがきちんと治療を受けて ください。

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