広報こしがや

2001年06月01日

No.355 ピロリ菌の除菌療法 大沢医院 大沢 勉

Q胃・十二指腸かいようを繰り返していて、H2ブロッカーの維持療法を続けています。昨年末、ヘリコバクターピロリ菌の除菌療法が保険適応になったと聞きましたが、除菌したほうがよいか迷っています。除菌療法のメリット、デメリットについて教えてください。
A胃かいよう・十二指腸かいようは再発しやすく、10年以上も再発を繰り返す患者さんもまれではありません。再発する原因の一つに、胃内に存在するピロリ 菌の関与があります。除菌療法とは、2種類の「抗生物質」と「胃酸の分泌を抑える薬」を服用し、ピロリ菌を取り除く治療法です。したがって、最大のメリッ トは、除菌に成功すれば、長年にわたる胃かいよう・十二指腸かいようが再発する苦痛より解放される点にあります。
次のメリットは、治療期間が短いという点であります。3種類の薬を1日に2回、7日間服用するだけです。最後まで正しく服用すれば、90㌫の確率でピロ リ菌が除菌できます。除菌できた場合は、1年後の非再発率は胃かいようで約85㌫、十二指腸かいようで約90㌫です。従来の治療法と比較して、すばらしい 成績であります。
次にデメリットについてです。除菌療法では通常量より多量に内服するため、若干の副作用が出現することがあります。いずれも症状は軽く、治療が必要とな るケースは少ないです。軟便(13・7㌫)、水様便を含む下痢(9・1㌫)、肝機能を含む臨床検査値の変動が報告されています。これらの症状が発現した場 合、自分の判断で薬を中止したり、量や回数を減らすと、除菌に失敗して治療薬に耐性を持ったピロリ菌が現れることがあります。発熱や腹痛を伴った下痢便に 粘液や血液が混ざっている場合には、直ちに服用を中止し、主治医に連絡する必要があります。除菌に成功した場合、約10㌫程度に逆流性食道炎(胸やけ)の 症状があります。これは、ピロリ菌の除菌により胃酸分泌が改善(正常化)することが一因であろうと考えられています。
いずれにしても、除菌療法を希望する人は、治療前に主治医から十分な説明を受け、また、治療中に気になる症状を感じた場合には、自分勝手に服用を中止したりせず、まず、主治医に相談することが治療を成功に導く最良の方法といえます。

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