広報こしがや

2001年07月01日

No.356 脳血栓予防薬はやめられますか? 新世紀脳神経外科 坂口 新

Q2年前に脳血栓になり今も軽いまひがあります。血栓予防薬を一生飲むのでしょうか。また、再発予防のための注意点を教えてください。
A一般に脳血栓の慢性期に再発予防として抗血小板療法と抗凝固療法が行われますが、抗血小板剤としてチクロピジン、アスピリンが最も多く使用されていま す。これらをいつまで服薬するかについて論じた文献は見当たりませんが、通常は一生服薬を続けると理解されています。ただし、副作用が重い場合は中止せざ るを得ません。アスピリンは胃腸症状、チクロピジンは白血球減少・肝機能障害などですが、服薬開始の数カ月以内に生じるのがほとんどです。この方のように 2年経過していれば心配ないと思います。ただ、外科手術・抜歯などの際には止血困難の可能性があり、その際は医師に相談してください。また、けがなどでも 傷からの出血も多くなりますので、けがをしないように注意してください。
再発予防の注意点としては脳血栓・脳こうそくの危険因子があれば、これを治療することです。危険因子に高血圧・糖尿病があり、これらは外来通院してきちんとコントロールを受けてください。
また、悪玉コレステロールが高い場合、脳血栓などの動脈硬化性疾患の既往を持つ人は、そうでない人に比べて厳格に治療すべきです。善玉コレステロールは 喫煙・肥満・運動不足で低下しますので、禁煙し適度な運動が必要です。アルコールは善玉コレステロールを上げるので、節度ある飲酒はかまいません。食生活 にもそれなりの注意が必要です。
脳血栓には穿通枝こうそくが最も多いのですが、脳主幹動脈のアテロームや心臓からの微小塞栓によるものと臨床症状のみから鑑別するのは困難です。再発予 防の観点からも正確な診断が必要です。それにはCTやMRIでこうそく部位を正しく診断するのみならず、MRA(MRIによる血管撮影で危険・痛みは伴い ません)やけい動脈エコーなどで主幹動脈の病変の有無を調べます。けい動脈の70㌫以上の狭窄では、保存的治療より手術の方が再発が少ない事が明らかに なっています。
また、ホルター心電図や超音波検査で塞栓源となる心臓疾患の有無も調べる必要があります。この場合、ワーファリンによる抗凝固療法が必要となる場合もあり、ワーファリン服薬中はビタミンKの豊富な納豆や緑黄色野菜の多量摂取は控えるべきです。

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