広報こしがや

2002年04月01日

No.365 糖尿病 なぜ肥満解消か 南越谷内科クリニック 板橋 秀雄

Q55歳の主婦です。3年前から糖尿病で通院しています。やせるよう指導されていますが困難です。
A推定糖尿病患者は700万人、予備軍も含めると実に1300万人とされ、この40年間で50倍増加しています。また、糖尿病性腎症による末期腎不全は透析導入の一番の原因ですし、糖尿病性網膜症による年間失明者は8000人と考えられています。
それではなぜここまで糖尿病が増えたのでしょうか。それはまさに人類と飢餓の歴史であると言われています。人類誕生から450万年、その間人類は常に飢 餓との戦いでした。そのため、ヒトの体はたまにしか手に入らない食物エネルギーを脂肪組織に蓄えられる遺伝子を持ったヒトだけが生き残ってきたのです。現 在のように、食べたいものが食べられる時代になってまだ40年程に過ぎません。この飢餓に耐え得る体質こそが、今ではマイナスに作用し糖尿病増加の原因と なっています。今やせられないで悩んでいる糖尿病患者さんは、長い人類の歴史上ではまさに優等生だったのです。ただ生まれてくるのが何10年か遅かったで すね。生まれるのが遅かったと悔やんでも仕方ありません。気を取り直して今日からまた減量スタートです。
ではなぜ「太った糖尿病患者さん」ではいけないのでしょうか。肥満と糖尿病に関連して、最近注目されているインスリン抵抗性という概念があります。通 常、糖尿病と言えばすい臓からのインスリン分泌低下による高血糖と考えますが、インスリンは出ているのに血糖が高い患者さんが見受けられ、このような方は ほとんどすべて肥満者です。今まではエネルギーの倉庫だけと考えられていた内臓脂肪から、インスリンの作用を妨害するホルモンが分泌されていることがわ かってきました。このために、インスリン分泌が良好でも高血糖になってしまいます。また、これに関連して内臓肥満・高インスリン血症・高血圧・高中性脂肪 血症の4つが合併した方は、動脈硬化や心臓発作などのリスクが極めて高いため、別名「死の四重奏」と呼ばれています。
数多くの糖尿病治療薬が使われている現在においても、食事・運動が治療の根幹であることに変わりありません。

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