広報こしがや

2003年06月01日

No.379 在宅ホスピスとは 岡野クリニック 岡野 昌彦

ある患者さんと家族の方が、がんの末期状態のため、今後は自宅での療養、介護をすすめられたので、どうしたらよいかと相談に来られました。がん告知がほ ぼ実施され、入院での医療の限界がある以上「家に帰り、家族とともに療養生活をしながら、人生を全うすること」は、本来あるべき姿の1つと考えられ、それ をチームで支援することが在宅ホスピスの目的であります。では、具体的な内容を患者さんの経過とともに示します。
①導入期・・・まず、外来にて、家族もしくは本人に現在の状況、症状の安定度、危険度、告知の内容をお開きします(前医からの紹介状があれば、より分か りやすい)。次に、今後について患者本人の希望や家族の希望を聞き、緩和治療の方針を決めます。さらに、家族の介護力(主体は誰で、ほかに誰が補佐できる のか)を判断し、無理なときは後方病院への入院を勧めることもあります。
②ケアの開始・・・在宅ケアのチームを整えます。主治医と専任看護師1~2名にほかの訪問センターの看護師1~2名でチームを組み、患者さんの症状緩和の方針をたてます。一方、介護支援センターにも情報を提供し、患者、家族が安心して日常生活を送れるように支援します。
③安定期・・・訪問診療、訪問看護は週に2~3回で、なるべくどちらかが訪問できるようにし、医師も看護師も携帯電話等にて24時間連絡できる体制をと ります。この時期には、疼痛緩和を主体にいろいろな合併症や精神症状、家族の精神的疲労(燃え尽き症候群に陥らぬように)の発症にも気を配り、患者、家族 とのコミュニケーションを密にしていきます。
④ターミナル期(1~4週)・・・本人の症状が急速に悪化し、本人、家族ともに肉体、精神的なサポートをもっとも必要とする時期で、疼痛の緩和も重点的 に施行し、モルヒネの持続投与もします。さらに、呼吸苦には在宅での酸素も導入します。本人、家族が不安がらずに死への意識(新たな旅立ちへの心構え)を 持てるように対処し、看取りの準備に入ります。訪問診療・看護は連日となり、ターミナルでは、1日2~3回行い、臨終に備えます。お亡くなりになった後 は、家族とともに遺体の清拭を行います。
以上が大体の経過ですが、あくまで在宅ホスピスは死を看取るケアではなくて、人生をよりよく過ごせるためのケアなのです。

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