広報こしがや

2004年02月01日

No.387 糖尿病 コントロールで合併症はどこまで防げるか? 南越谷内科クリニック 板橋 秀雄

Q.糖尿病、高脂血症、高血圧で治療中です。空腹時血糖120前後、ヘモグロビンA1c6.7%と良かったのに軽い脳梗塞こうそくになってしまいました。また食後血糖が重要と新聞で見ました。今後の注意点について聞きたいのですが。
A.厚生労働省は平成15年8月「平成14年糖尿病実態調査」の速報分を発表しました。平成9年に続く2回目の調査で、糖尿病が強く疑われる人は740万人(前回690万人)、糖尿病の可能性を否定できない人は880万人(前回880万人)で、両者を合計すると1620万人で、成人の6人に1人は糖尿病かその予備軍であることがわかりました。このように糖尿病は増加の一途をたどり、まさに国民病となってしまいました。
では、糖尿病をうまくコントロールすれば合併症はすべて防げるでしょうか?この問題を解くために、長期にわたる大規模な研究が米国、英国そして日本でも行われました。その結果、ヘモグロビンA1c6.5%以下を継続する良いコントロールの患者さんは網膜症、腎症、神経障害などの糖尿病に特有なこれらの合併症を防止できることがわかりました。
しかし、心筋梗塞こうそくやそのほかの動脈が硬化して起こる病気まで防止できるとのはっきりした証明は得られませんでした。心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症などには高血圧の治療、コレステロールなどの高脂血症の治療も重要であることがわかっています。これらの大きい血管の動脈硬化による病気は、糖尿病の人だけに起こるものではなく、糖尿病の人には余計に起こりやすいのです。糖尿病を良くコントロールするだけでなく、高血圧、高脂血症も同時に治療することが重要です。
食後血糖の重要性については、空腹時血糖が正常(110未満)にもかかわらず食後血糖が高く糖尿病と診断される方が3割と言われていますので、軽症糖尿病の発見には食後の血糖測定の方が適しています。また、食後血糖が正常域と糖尿病域の中間の値を示す糖尿病予備軍の集団での心筋梗塞、脳梗塞などの発症率は高まることがわかっています。ヘモグロビンA1cは過去1~2カ月の平均血糖を示しますので、ぜひ6.5%以下を続けるよう頑張ってください。

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