広報こしがや

2004年07月01日

No.392 ベーチェット病について わかば眼科 若林 光治

ベーチェット病は口腔粘膜、皮膚、眼、外陰部など、全身の臓器に炎症が繰り返して起こる難病です。原因はまだわかっていませんが、ある種の遺伝的体質が関与していると言われています。高度成長期に急増したため環境汚染物質の関与も疑われています。
次の4つの症状がそろっているものを完全型、そうでないものを不全型といいます。
①口腔粘膜のアフタ性潰瘍
②皮膚症状
③ぶどう膜炎
④外陰部潰瘍
これらの主症状のほかに関節炎、副睾丸炎ふくこうがんえん、消化器病変、血管病変、中枢神経病変などを起こすことがあります。すべての症状が一度に発現するわけではないので、診断に何年もかかることもあります。眼球内部の虹彩こうさい、毛様体、脈絡膜という部分を総称してぶどう膜と呼ぶのですが、この部分が炎症を起こす病気がぶどう膜炎です。ベーチェット病ではこのぶどう膜炎が何度も繰り返して起こり、次第に視力が低下して、失明してしまうことが多いです。女性よりも男性の方がぶどう膜炎を起こすことが多いと言われています。ぶどう膜炎が起こると、硝子体しょうしたい(眼球内部の寒天のような物質)や前房(角膜と虹彩、水晶体で囲まれた部分)に濁りが生じます。本来、硝子体や前房は無色透明な場所なので、ここが濁ることにより、かすんで見えたり、ごみが飛んで見える飛蚊症ひぶんしょうや、電灯のまわりに虹がかかって見える虹視症こうししょうがでることもあります。『自分はベーチェット病なのでは?』と不安になられた方もいるかもしれませんが、ベーチェット病ではアフタ性潰瘍(直径数ミリの白く丸い口腔粘膜の潰瘍)は、ほぼ必発で、初発症状のことが多く、この症状が認められないのであれば、ベーチェット病の可能性は低いと思われます。またアフタ性潰瘍はいろいろな病気で起こる症状なので、アフタ性潰瘍があるからといって、直ちにベーチェット病が疑われるわけではないのは、言うまでもありません。

過去のホームドクター