広報こしがや

2004年11月01日

No.396 子宮筋腫について 高見沢産婦人科医院 高見沢 実

子宮筋腫とは、子宮筋層を構成する平滑筋が、こぶのように球形を呈して腫大する良性腫瘍です。発育する方向により奨膜下、壁内、粘膜下筋腫に区別されます。多くは多発性です。大きさは微小なものから成人頭大までさまざまです。摘出された子宮筋腫の重さですが、大きいものでは外国の報告で、数十誅といったケースもあります。さすがに日本では、最近は子宮がん検査などが積極的に行われるようになったために、このような大きいものはめったにありません。子宮筋腫を有していても無症状で経過することが多く、子宮がん検査の際に偶然、発見されたりします。このため、子宮筋腫の正確な有病率は不明です。閉経後には縮小傾向をとることが多いので高齢者の頻度は少なく、18歳未満での発生もまれです。子宮がん検査で子宮筋腫が発見される頻度は、10~30%と諸家しょかにより報告にばらつきがあります。原因ですが、性成熟期を中心に発育し、閉経後には発育が停止あるいは縮小することから、エストロジェン依存性と考えられています。最近では筋腫組織の染色体の12、14番目の異常が発見され、遺伝子異常との関連も示唆されています。子宮筋腫の大きさ、部位、数により症状は異なります。症状としては、圧迫感、下腹痛、生理痛、過多月経などがあります。不妊症の原因になることもあります。例えば、過多月経の方は、徐々に貧血となり息切れや全身倦怠が認められます。さらに長期間に及ぶと高度の貧血となり、呼吸困難や心不全で生命に関わる場合もまれにありますので、たかが貧血と侮れません。
子宮筋腫の大きさ、臨床症状、挙児希望の有無により治療は異なります。小さな筋腫で無症状のものは、腫瘤しゅりゅうの増大傾向をチェックしながら経過観察します。中枢性ゴナドトロピンの分泌を抑制し偽閉経状態にし、出血をコントロールしながら、筋腫を縮小させる薬剤もあります。投与中は縮小傾向がみられますが、薬剤を中止すると元の大きさにもどります。外科的治療としては、筋腫核出術、単純子宮全摘出術などがあります。最近では開腹術ではなく、腹腔鏡で手術を行っている施設もあります。

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