広報こしがや

2005年12月01日

No.409 鼓膜切開について とくまる耳鼻咽喉科 徳丸 隆太

「鼓膜を切開しましょう」と言われると、恐ろしい事をすると思われる方も多いと思います。患者さんにとって耳の中は自分では見えない部分であるため、余計に不安になると思います。そこで以下の説明を読んで頂き、鼓膜切開の必要性を理解し、恐怖感や不安を取り除いて頂けたらと思います。
鼓膜切開とは鼓膜をメスにて切開し、鼓膜の奥の中耳にたまっている膿うみや液体を取り除く手術です。痛みを伴う可能性がありますので、鼓膜の表面を麻酔してから施行することが一般的ですが、入院の必要はなく日帰りで行います。
鼓膜切開の適応となる病気としては、耳の痛みや発熱の原因となる急性中耳炎や、難聴や耳閉感の原因となる滲出しんしつ性せい中耳炎です。中耳に膿や液体がたまっていると、この様な症状が出ますので、切開し取り除くことによって症状は改善してきます。中耳炎は抗生物質などの薬物療法だけでも完治することが多いので、すべての方に鼓膜切開を施行するわけではありません。元々鼓膜に穴の開いている慢性中耳炎や、急性中耳炎でもすでに鼓膜に穴が開いてしまい耳だれが出てきている方には新たに切開する必要はありません。薬物療法だけでは痛みや発熱などの改善の見込みがないと思われる方や、通院治療していても難聴の改善しない方には積極的に鼓膜切開をお勧めしております。「鼓膜を切ったら難聴になりませんか」とよく質問されますが、反対に難聴の改善のために行うものであることを理解してください。
中耳炎の程度にもよりますが、切開後3~4日、耳だれが続くことがあります。出血を伴うことがありますが、珍しいことではありませんので心配する必要はありません。この耳だれが止まれば、切開した鼓膜の穴はほぼ自然に閉鎖します。閉鎖後に中耳炎を再発した患者さんには、もう一度鼓膜切開を行うこともあります。何回も鼓膜切開しても中耳炎の治らない患者さんには、鼓膜にチューブを留置する方法をお勧めすることもあります。
鼓膜切開についてご理解頂けたでしょうか。決して難しい手術ではありませんし、症状が改善することが多いので、医師から勧められたときは怖がらず前向きに考えて頂きたいと思います。

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