広報こしがや

2006年06月01日

No.415 胃食道逆流症について 中島医院 中島 久元

胸やけを経験したことはありませんか。私にも経験がありますが、何とも言えない不快なものです。その原因のひとつとして、胃食道逆流症(以下逆流症)が考えられます。逆流症は、近年増加しつつある病気です。逆流症は胃酸が食道内に逆流することによって、胸やけなどさまざまな症状を起こし、不快のため睡眠、食事などに障害をきたす病気です。食道下部には括約筋があり逆流を防止していますが、この機能が低下したり、胃酸分泌が亢進こうしんして症状が出現します。
その典型的な症状は、胸やけ(前胸部の焼けるような感じ)です。このほかには、逆流のため喉のどの違和感、かすれ声などを訴え、慢性の咳せき、喘ぜい鳴めいといった喘息ぜんそく様症状も続くことがあります。狭心症様の胸痛も訴えることがあります。そのため耳鼻科や呼吸器科や循環器科などに受診されている方が、逆流症の治療で軽快する人もいます。
逆流症の危険因子としては、肥満、便秘、過食、タバコ、アルコール、脂肪食、嗜好しこう品(香辛料)などが知られています。従来日本での胃食道逆流症は高齢女性に多くみられてきました。これは腰の曲がった姿勢のため腹圧が高まり、食道裂孔れっこうヘルニアの合併が多いためです。近年、肥満や不規則な食生活などのため若い世代にも患者は増加しています。
診断は、内視鏡検査で行います。食道裂孔ヘルニアの有無や食道に炎症があるか確認します。ほかに同じような症状を起こす病気(癌がん、胃潰瘍かいようなど)がないことを確認しておくことも大切です。すべての胃食道逆流症で炎症所見が認められるわけではありません。この場合、24時間食道内PHモニタリング検査などが行われます。簡便には、胃酸分泌抑制薬の試験的投与がよく行われています。胸痛の患者では心疾患かどうか心電図などの検査も行われます。
治療は、ライフスタイルの改善と酸分泌抑制薬(胃酸の分泌を抑える薬)などによる内科治療が中心です。最もよく効く薬はプロトンポンプ阻害剤でH2受容体拮抗きっこう剤や消化管運動改善剤も使用されます。いずれにしても、症状が改善後もしばらくの間は維持療法が必要です。ライフスタイルでは暴飲暴食をしない、脂肪摂取を減らす、肥満を改善する、腹部を圧迫しない服装をする、前かがみ姿勢での作業を避けるなどの注意も有効です。

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