広報こしがや

2012年05月01日

No.486 過敏性腸症候群 ( I B S) おきつ内科クリニック 沖津 幹

過敏性腸症候群という病気過敏性腸症候群という病気をご存知でしょうか?あまり聞き慣れないかもしれませんが、現代のストレス社会において増加傾向にあるばかりか、その症状によってQOL(生活の質)を障害するため適切なケアを必要とする病気です。
発症のメカニズムはまだ不明なことが多いですが、その病態は①消化管運動の異常(偏った食生活やストレス等で腸の運動が異常をきたす)②消化管知覚過敏(他人よりも痛みに対して敏感) ③心理的要因(抑うつや不安)の3つといわれています。
診断基準も定義されており、「過去3カ月間に、月3日以上にわたって腹痛や腹部不快感が繰り返し起こり、その腹部症状が①排便によって軽快する ②排便頻度の変化で始まる
③便形状変化で始まる、の3項目のうち2つ以上を伴うもの」となっています。
症状は硬もしくは兎糞状便・もしくは水様便・便意切迫・残便感・腹部膨満感といった様々な腹部症状を認めます。簡単に言えばお腹に関するエピソードがよくある、ということになります。例えば、週末は問題ないのに月曜日の登校や出勤前にお腹が痛くなる、重要な会議や試験の前に下痢する、電車に乗った途端にお腹がギュルッとくる、いつも下痢と便秘を繰りかえしている等の経験をお持ちの方はIBSの可能性があります。
なお、IBSでは血便・発熱・急激な体重の減少といった症状はほとんどありません。ですからこうした症状がある場合は、他の腸疾患(がんや炎症)を考えなければならないので、その際には適切な検査を受けてこれらの疾患を否定することが大切です。
最後に治療ですが、消化管機能調整剤や鎮痛剤などが中心になりますが、状態に合わせて緩下剤や整腸剤の内服も行います。さらに抗うつ薬や抗不安薬が奏功する場合もあります。しかしながらこうした薬物による治療を行う前に、規則正しい食生活や排便習慣、十分な睡眠を心がけることや、過度な疲労やストレスを避けることを心がけることが大切です。

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