広報こしがや

2013年12月03日

№505 家庭血圧測定のすすめ  こしがや駅前クリニック 永松 仁

高血圧症の診断・治療には血圧測定が欠かせませんが、最近特に注目されているのが家庭血圧です。診察室では、緊張のため本来の血圧よりも高くなることがあり、自宅でリラックスしているときのほうが正しい血圧が測れると考えられるためです。昨今、自動血圧計が進歩して使いやすく正確になったこともあり、家庭血圧が重要視されています。現在の高血圧症の治療ガイドラインでも、診察室血圧とともに、家庭血圧の目標も併記されています。
 それでは家庭血圧が特に重要な意味合いを持つ高血圧についてお話しします。家庭血圧が正常血圧であるにもかかわらず、診察室での血圧が高血圧をしめす病態を「白衣高血圧」と呼んでいます。明確な定義はありませんが、外来血圧が140/90㎜Hg以上に上がっているのに、家庭血圧135/85㎜Hg未満に保たれているもの、とされることが多いようです。診察室高血圧患者の約10~30%にみられます。おおむね危険は少なく、積極的な治療の必要はないとされています。しかし、白衣高血圧は将来の高血圧の予備群である可能性が報告されています。薬は不要でも、減塩食、体重コントロール、禁煙等の生活習慣の修正は必要で、定期的なチェックも必要です。
 また、「診察室の血圧は正常なのに家庭の血圧が高く、診察室での測定では高血圧と分からない状態」を、「仮面高血圧」と呼びます。仮面のように本当の姿が隠されていることから名付けられました。脳卒中や心筋梗塞などの可能性は、診察室高血圧の人と変わりません。中でも、朝の血圧上昇が大きい人や、夜間も血圧が高いままの人を「早朝高血圧」と呼んでいます。夜から早朝にかけては脳卒中や狭心症などが起こりやすく、早朝高血圧が理由のひとつといわれています。
 その他にも家庭血圧測定のメリットがあります。家庭血圧を記録することで、十分に血圧が下がっているか、あるいは必要以上に血圧が下がっていないか、また、お薬を飲む前に測ることで効果がどれくらいの時間続いているかも確かめられます。家庭血圧を上手に活用して、より良い血圧コントロールを目指しましょう。

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