広報こしがや

2014年04月10日

№509 アルツハイマー病の予防法 しもかわクリニック 下川雅丈

世界一の高齢社会である日本では、認知症は深刻な社会問題となっています。65歳以上の高齢者のうち、15%がすでに認知症で、推計462万人に達しています。
 認知症の原因には、脳の変性、脳血管障害、外傷、感染症、腫瘍、ホルモンやビタミンの不足、遺伝子異常などが あります。その中で最も多いのは、「脳が消えていく病気」と称されるアルツハイマー病です。
 アルツハイマー病患者では、40歳代頃、脳にアミロイドβ蛋白という神経細胞に毒性のある異常な蛋白質がたまり始め、ゆっくりですが確実に増えます。このため、50歳代頃になると大脳の神経細胞が無症状のうちに死滅していきます。そして、60歳代頃に認知症を発症し、70歳代頃、衰弱し人生を終えるという経過をとります。発症後は、家族や社会に多大な負担がかかることは周知のとおりです。これまで世界中で猛烈な勢いで研究が進められてきましたが、現在のところ、アルツハイマー病には進行を遅らせる薬はあるものの、治したり予防したりする薬はありません。唯一、運動だけがアルツハイマー病の予防や認知症状の改善に有効と医学的に証明されていますが、その効果は十分なものではありません。
 最近、疫学的な研究により、メカニズムは分りませんが、中年期に高血圧、高血糖、脂質異常といった生活習慣病があると、アルツハイマー病にとてもなりやすいということが解明されました。また、魚や野菜中心のバランスのとれた食事と赤ワインのポリフェノールを摂取する「地中海式ダイエット」をしている人は、アルツハイマー病になりにくいことも知られています。
 脳卒中や心筋梗塞は、生活習慣病の改善が予防につながります。アルツハイマー病も、アミロイドβ蛋白がたまり始める中高年期の無症状のうちに、高血圧症、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病を食事や運動、薬などでうまくコントロールすれば、予防したり発症を遅らせたりできる可能性がとても高いと考えられるようになってきています。
 毎日の生活の中のちょっとした心掛けが健康長寿につながるかもしれません。

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