広報こしがや

2016年09月08日

№538 新越谷肛門胃腸クリニック 左雨元樹 肛門と大腸のはなし

 おしりは他人には見せたくない場所です。それ故、多少調子が悪くても受診が遅れてしまいがちです。しかし、毎日口から食べたものが出てくる大事な場所です。人類古来、かのナポレオンや松尾芭蕉も痔に悩んでいたといわれています。婦人科の診察と異なり、寝そべった姿勢で診察する病院も増えていますので、恥ずかしがらず受診しましょう。痛み、出血、脱出、かゆみ、便秘や下痢など症状はさまざまですが、単に「痔だろう」と済ませてはいけません。大腸がんやポリープ、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)が隠れていることもあります。食べたものが出てくる場所ですから、腸の病気のバロメーターでもあります。  疾患として一番多いのはやはり痔核(いぼ痔)ですが、その他にも裂肛(きれ痔)や痔瘻、肛門周囲の湿疹などいろいろあります。実は肛門という場所は、非常に個人差の大きい場所であることに加え、病態も多彩であり、治療法もそれぞれ異なります。最近はネットで調べて「痔瘻だと思う」と自ら正しい診断をされて来院される患者さんもいらっしゃいますが、逆に情報が氾濫して混乱している患者さんも多いのが現状です。生兵法はけがのもとです。痔だと思って放っておいたが、良くならないので受診してみたら大腸がんであったということも少なくありません。早期がんやポリープの状態で発見できれば、内視鏡で治療が完了するので、異常を感じたら早めの受診・検査が重要です。  受診を遅らせる要因には、羞恥心のほか、痔の治療は痛いというイメージもあるでしょう。しかし手術を必要とせず、軟こうや坐剤、排便習慣の改善等で改善するケースの方が多く、また手術が必要な場合も状態によっては痔を切らずに、注射で治す治療法も開発されています。悪化させてしまえば、こうした低侵襲な治療の機会を失ってしまうことにもつながりますので、早めの受診をお勧めします。

 

 

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