広報こしがや

2017年01月06日

№541 痛風は痛いだけ? 越谷くろす内科クリニック 黒須哲也

血液中の尿酸はどうして高くなることがあるのでしょうか。体質的な要因に加え、食べ過ぎ・運動不足・アルコールの飲み過ぎが原因となります。健康に対する意識が高まる中、プリン体ゼロをうたっている商品も見受けられます。皆さんの中にもプリン体という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。プリン体には、食物などの体の外から入ってくる外因性プリン体と私たちの体の中で産生される内因性プリン体があります。尿酸はこのプリン体が分解されて産生されます。尿酸値が高くなることが高尿酸血症であり、尿酸が結晶化し関節が腫れて強い痛みを生ずることを痛風と言います。  実は、尿酸がたまる動物はあまり多くはありません。多くの動物は、尿酸を分解する酵素を持っており、尿酸がたまることはないのです。ヒト・チンパンジー等の数種類の霊長類は、この尿酸を分解する酵素を進化の過程で消失しており、高尿酸血症や痛風を発症してしまうのです。   尿酸値が高くなると痛い痛風発作を起こすだけでは済みません。血液中の尿酸値が7・0㎎/dlを超えると尿酸は結晶化し全身に影響を及ぼします。尿酸の結晶が腎臓に沈着し続けると、痛風腎という腎臓の病気を引き起こします。 腎不全を発症することもあります。尿路結石の原因にもなります。また最近話題のメタボリックシンドロームとの関連もわかってきています。高尿酸血症そのものが、糖尿病の発症や動脈硬化を引き起こす可能性が疑われており、脳血管障害・心臓病を引き起こす危険因子の一つではないかと考えられています。  痛風の記載は古く、ローマ時代に、イヌサフランという植物が痛風に効くという記載があり、後の19世紀にイヌサフランから痛風発作の治療薬コルヒチンが抽出されました。その後、数種類の薬が開発されましたが、長らくの間、高尿酸血症・痛風の治療薬は限られていました。2008年以降、日本で新たな薬が開発され、治療の選択肢も広がっています。尿酸値が高いと指摘され放置している方、痛風の既往のある方はご相談ください。

 

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