広報こしがや

2017年05月17日

No.545 橋本病って聞いたことがありますか? まつもと内科 松本 和久

橋本病は甲状腺の病気のひとつです。慢性甲状腺炎とも呼ばれ、自己免疫の異常により自己抗体(自分の細胞を攻撃するもの)ができ、甲状腺を破壊して慢性的に甲状腺に炎症をおこし、甲状腺機能が低下してしまう病気です。
 甲状腺は首の正面のやや低い位置にある約20㌘程度の小さな臓器です。左右に羽を広げた蝶の形をしていて、気管の前に乗っかるように位置しています。機能としては甲状腺ホルモンを分泌します。甲状腺ホルモンにはいくつか機能がありますが、主に代謝の活性化に関与しています。甲状腺機能(ホルモン)や自己抗体は血液検査で調べることができます。
 橋本病は女性に多い病気で成人女性の約3~10%程度が潜在的に橋本病にかかっているといわれています。つまり、甲状腺機能を低下させてしまう一番の原因は橋本病ですが、自己抗体をもっているからといって必ずしも甲状腺機能低下症になるわけではありません。生涯甲状腺機能に異常が見られない場合もあります。症状としては甲状腺が大きく腫れてきますが、甲状腺機能低下がなければ自覚的な症状は特にありません。機能低下してきた場合に無気力、疲労感、寒がり、浮腫みなどの症状が認められます。
 治療は不足しているホルモンの補充です。甲状腺ホルモン薬を内服します。自覚症状は1~2カ月程度で改善してきます。甲状腺機能が正常であれば治療する必要はありません。ホルモン補充を開始した後、甲状腺ホルモン薬を内服しなくても問題ない状態になるには時間がかかり、中には一生甲状腺ホルモン薬を内服し続けないといけない方もいます。しかし、内服をしっかり行っていれば特別な制限もなく生活できる病気です。
 ただし、甲状腺機能が低下している方には特に注意すべきポイントがあります。ヨウ素の過剰摂取は甲状腺機能を低下させる危険性があります。通常の量であれば問題ありませんが、昆布の摂取過剰やヨード含有のうがい薬も毎日使うとヨウ素の過剰になり甲状腺機能が低下するので注意しましょう。

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