広報こしがや

2018年11月29日

No.564 「CKDを知っていますか?」 埼友クリニック  渡邊 光康

皆さん、CKD(シーケーディー)という言葉をお聞きになったことはありますでしょうか? 日本では10年以上前に導入された「慢性腎臓病」という疾患概念で、英語表記の頭文字をとってCKDと名付けられました。
CKDは各国人口の5~10%がり患する国民病で、進行すると末期腎不全に陥り、血液透析・腹膜透析・腎移植といった腎代替療法を必要とします。現在、日本では1300万人以上の方がCKDにり患しているといわれ、そのうち33万人以上の方が透析治療を受けています。一方、CKDは心筋梗塞や脳卒中といった、直接生命や日常生活の破綻に結びつくような、重大な心血管疾患と関連があることが分かってきました。CKDにり患していると、心血管疾患による死亡率が、一般の方々に比べて2~5倍になるという報告もあります。
それでは、どのようにCKDと診断するのでしょうか?
(1)たんぱく尿を主とした検尿異常や画像検査で腎障害の存在が明らかであること
(2)腎機能の中等度以上の低下を認めること
(1)(2)のいずれかあるいは両方が3カ月以上持続した病態をCKDと定義します。
正確な腎機能の評価には24時間尿を貯める必要がありますが、健康診断で行うのは困難なので、現在は血液検査のCr(クレアチニン)値と年齢・性別から推定した糸球体濾過量(eGFR)を腎機能の指標として用いています。eGFRが60ミリリットル/分/1・73平方メートル未満であれば中等度以上の腎機能低下と判断し、この状態が3カ月以上続いた場合、CKDと診断しています。最近の健診結果であれば、eGFRの値も明記されているはずなので、ぜひ確認してみてください。
もう一つ強調しておきたいのが、たんぱく尿の重要性です。たんぱく尿こそが、CKDの進展や心血管疾患の発症と強く関わる因子なのです。
我が国の沖縄で行われた研究では、健診時にたんぱく尿の程度を評価し、17年間追跡したところ、尿たんぱく白(3+)の16%、(2+)の約7%の方で、透析治療が開始となっていました。つまり、たんぱく尿が多いほど末期腎不全に至りやすいことが、我が国の大規模観察研究で証明されているのです。
腎臓は沈黙の臓器といわれ、自覚症状が出にくいことで知られています。何らかの症状(むくみなど)が出たとき、健康診断で検尿異常が指摘された場合は、ぜひかかりつけ医で再検査をしてください。
CKDと診断され、精密検査が必要となれば、腎臓専門医と連携し、適切な治療と療養を受けてください。早期の診断と適切な腎保護療法によりCKDの進行を阻止または遅延することで、生命予後や日常生活の質を改善することができると確信しています。

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