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2019年02月04日

NO.567 大腸憩室症(だいちょうけいしつしょう)について  おか内科クリニック 岡 茂樹

近年、内視鏡検査の普及に伴い、憩室という疾患を言われた方は多いのではないでしょうか。憩室とは、臓器の内壁の一部が外側に向かって袋状に飛び出した状態を言います。胃・十二指腸や小腸、膀胱、気管などにもできますが、今回は比較的よく遭遇する大腸憩室症について述べたいと思います。
大腸憩室症の原因は、加齢による腸管壁のぜい弱化、食物繊維の摂取量減少による便秘や腸管のれん縮(けいれん)などでの腸管内圧の上昇によると言われています。
大腸憩室は大腸のどこにでもできますが、上行結腸という右側腹部の腸やS状結腸という下腹部の腸が好発部位です。
では、どのような腹部症状が出るのでしょうか。大腸憩室症の多くは無症状ですが、下痢、便秘などの便通異常や腹部膨満感、腹痛などの腸運動異常に基づく症状が起こることもあります。また、憩室内の動脈が傷ついて出血する憩室出血や、憩室に感染を生じてしまい、発熱や腹痛を認める憩室炎が起こることがあります。憩室出血では、貧血や血圧低下など出血性ショックを呈することもあります。憩室炎では、せん孔(穴があくこと)や狭窄による腸閉塞を起こすことがあり注意が必要です。
最後に治療法についてお話ししたいと思います。まず、便通異常などでは繊維分の多い食事を心がけ、便秘をしないようにすることが大切です。憩室出血では、出血量にもよりますが、禁食にして点滴を行います。多くは自然止血しますが、輸血や内視鏡的治療が必要なこともあります。憩室炎では、禁食にして抗生剤投与を行い炎症が落ち着くのを待ちます。せん孔した場合は、緊急に手術を施行し、人工肛門を造設することにもなりますので、早急に炎症を抑える治療が必要です。
大腸憩室を指摘された方で、下血、発熱と腹痛を認めた場合は、憩室出血や憩室炎を疑い、医療機関を受診することをお勧めいたします。

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