広報こしがや

2019年08月01日

NO.570 腎臓を知ることでたんぱく尿の怖さを知ろう   埼友クリニック 加藤 徳介

    広報こしがやお知らせ版平成30年11月号で、当クリニック医師がお話ししたCKD(慢性腎臓病)について覚えていますか? そこで、たんぱく尿の存在が、CKDの進展や心血管疾患の発症と強く関わる因子であることを説明しました。では、なぜたんぱく尿がそこまで悪者扱いされるのでしょうか。それを知るにはまず腎臓の構造と機能を理解する必要があります。

 腎臓はソラマメのような形をした握りこぶしくらいの大きさの臓器で、腰のあたりに左右対称に2個あります。腎臓は主に尿を生成することで、私たちの体を正常な状態に保つよう、24時間365日黙々と働き続けています。尿の生成はネフロンという基本単位で行われ、糸球体と尿細管で構成されています。このネフロンが一つの腎臓に約100万個ずつあり、流れ込んだ血液をろ過・再吸収することで、老廃物などを尿として体の外に追い出しています。

 糸球体は動脈から枝分かれした毛細血管が絡み合った直径0・2ミリメートル程度の糸玉のような構造で、一分間に約1リットル流れ込んでくる血液の約10%をろ過し、毎分100ミリリットル程度の原尿を尿細管に流し込んでいます。尿細管は腎臓の中を複雑な走行をしながら原尿から体に必要な物質を約99%再吸収し、最終的には毎分1ミリリットル、つまり1日約1500ミリリットル程度の尿を生成します。

 このように、正常な状態でもミクロな糸球体に大きな負荷がかかっていることが想像できるかと思いますが、暴飲暴食により過剰な食塩・たんぱく負荷がかかると、糸球体肥大・過剰ろ過状態を招くことになります。さらに肥満・糖尿病・高血圧といった生活習慣病により、動脈硬化などの血管病変が進行することで、より糸球体に圧がかかり、本来なら染み出さないはずのたんぱくが尿中に認められるようになるのです。先述したように、腎臓・糸球体は血管の集合体のようのものであり、たんぱく尿が出るということは、これらの血管が障害を受けていると考えられます。腎臓の血管を全身の血管の写し鏡と捉えると、たんぱく尿が出ているということは、脳や心臓の血管も同様に障害を受けている可能性があると考えられ、実際たんぱく尿を有するCKD患者では、重大な心血管疾患合併症が多く認められることが証明されています。

 少し難しい話になりましたが、この機会に腎臓をいたわる気持ちをもって、食塩制限・たんぱく制限の必要性や肥満・糖尿病・高血圧管理の重要性を感じていただけたら幸いです。なお、たんぱく制限を行う際にはそれ相応のエネルギー摂取が必要となります。十分なエネルギー摂取ができないと、フレイルやサルコペニアといった状態になりかねませんので、専門家(栄養士)の指導をしっかり受けるようにしてください。

 

 

 

 

 

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