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2019年08月01日

NO.572 胃腸が弱い?過敏性腸症候群かもしれません  蒲生クリニック  原田 章

 過敏性腸症候群は、有病率が10%程度と多くの方がり患している、中部ないし下部消化管における代表的な機能性消化管疾患です。症状として慢性もしくは再発性に腹痛、腹部不快感、便通異常を認め、排便の回数、便の形状(硬さ)の変化があり、排便により和らぐ腹部の不快感が知られています。

 過敏性腸症候群は機能性疾患であり、器質的疾患(組織や細胞が変形、変性あるいは破壊され、形が変わってしまっているような疾患)とは異なり、腸の過剰な運動や、腸の知覚過敏などにより症状が起こることから、検査で原因となる異常が見つかりません。そのため診断は、症状経過および血液検査、便潜血、腹部レントゲン、大腸内視鏡検査等で異常を認めないことの確認で行います。症状から過敏性腸症候群と考えられたとしても、発熱・関節痛・血便・6カ月以内で3キログラム以上の体重減少等を伴う場合、貧血・低たんぱく血症・炎症反応陽性などを伴う場合、50歳以上での発症については、過敏性腸症候群以外の大腸がんや慢性の腸炎等の可能性があるため、自覚的な症状が軽度であったとしても、大腸内視鏡検査等を含めた検査の実施を強くお勧めします。

 治療としては、消化管の運動を調節する薬、便の硬さを調節する薬などの内服で行います。また、ストレス自覚時に症状が増悪することが知られており、ストレスの回避、解消を心がけることも有効です。これらの治療で症状軽減をはかることができます。

 過敏性腸症候群は症状により、生活に支障や、精神的な負担を感じる方が多く見受けられ、スコア化したQOL(クオリティ・オブ・ライフ…「人生の質」「生活の質」)での評価において、り患者は健常者に比較しQOLが低下、患者は非受診者よりQOLの低下が少なくなっていることが報告されています。腹部不快、排便の異常等で生活に支障を感じる場合には、治療を検討いただくことをお勧めします。

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