広報こしがや

2019年12月06日

NO.576 不整脈と脳梗塞 松尾医院 松尾一可

心臓の病気である不整脈が脳梗塞の原因となることをご存じでしょうか? その不整脈の一つに心房細動があります。心房細動は心臓の上の部屋(心房)が1分間に400回~600回の速さで不規則に震え、正しい収縮と拡張ができなくなる不整脈です。年齢とともに増加し、60歳を超えると頻度は急激に高まり、80歳以上では約10人に1人は心房細動があるといわれています。
 加齢以外にも、高血圧・糖尿病・甲状腺疾患・生活環境の乱れ・心不全などが原因で起こります。心房細動が続くと心臓から血液がうまく流れず、血液の流れが悪くなり血栓ができやすくなります。この血栓が脳の血管を詰まらせると脳梗塞が起こります。
 心房細動が原因の脳梗塞は発症が突然で、約60%の方が命に関わるだけでなく、重篤な後遺症を残して寝たきりや介護が必要になることがあります。このため脳梗塞の危険性が高い場合は予防のために心臓に血栓ができるのを防ぐ薬(抗凝固薬)を使います。抗凝固薬は治療により出血の危険性を高めるため、脳梗塞の危険性や臨床症状など総合的に判断して治療の適応かどうかを判断します。抗凝固薬を開始するかどうかを決める際に最もよく使用される指標の1つにCHADS2スコアがあります。これは5つの評価項目の頭文字をとって命名された頭字語です。脳梗塞の危険因子とされている心不全(C。心臓の機能が悪い状態)、高血圧(H)、年齢(A。75歳以上)、糖尿病(D)があると各1点、脳梗塞や一過性脳虚血性発作の既往(S)を2点として合計6点満点として計算し、点数が高いほど心房内で血栓ができやすく、脳梗塞が起こりやすくなり、抗凝固薬を適切に服用することが大事です。また、服用するうえで、自己判断で薬を中断・調節することは大変危険です。処置や手術などで薬の調節が必要な時は主治医に相談しましょう。
 健康診断などで心房細動を指摘されても、脳梗塞予防の重要性について知識や関心がなければ、その後の受診につながらず、脳梗塞を予防できません。心房細動と診断されたら、かかりつけの主治医または専門医にご相談ください。

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