広報こしがや

2020年05月28日

NO.579 卵巣がんの予防は可能? 産婦人科菅原病院 寺内文敏

 日本における卵巣がん患者は、年々増加傾向にあります。また、それに伴い死亡者数も増加しており、現在では、婦人科がん(子宮がんなど)の中で最も死亡率の高い病気となっています。なぜならば、卵巣がんは診断された時点で約70%近くが転移を認める進行例だからです。つまり、早期に見つけることが大変難しい病気なのです。
 その理由としては、早い段階では自覚症状に乏しいため、ということが考えられます。
 最近は、手術療法の改良や新規抗腫瘍薬(分子標的治療薬など)の開発のおかげで、一時期よりは予後(治療成績)の改善が図られるようになってきていますが、依然、難治性の病気であることに変わりはありません。
 卵巣がんの予防に関しては、その発症の「危険因子」を知ることが大切です。まずは遺伝性要因として、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーが公表したことにより有名になりました)が挙げられます。複数の親族に、乳がんもしくは卵巣がんが発症している場合は要注意です。近年は、原因遺伝子の検索も可能ですので、専門病院への相談もお勧めします。遺伝とは無関係の要因として、妊娠・出産経験の無いこと、子宮内膜症にかかっていること、肥満や喫煙、女性ホルモンによる治療などが挙げられます。これらの危険因子をふまえて考えられる予防法として、遺伝性の場合は、近年は予防的卵巣卵管切除術という方法が検討されています。
 遺伝とは無関係の場合で最も有効な予防法は、経口避妊薬(いわゆるピル)の服用です。最近は副作用の少ないホルモン含量の低いタイプも汎用されていますので、特に長期にわたって妊娠・出産の予定がない場合や、子宮内膜症に過去にかかったことがある場合などは、薦められる予防法です。また、子宮内膜症にて卵巣が大きくなっている場合(チョコレート嚢胞などと呼ばれる状態)では、年齢や大きさにより積極的に手術(通常は腹くう鏡手術)を検討することも大切です。
 いずれにしましても、婦人科のかかりつけ医を設けて、定期的な検診を受けることがなにより重要です。

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