広報こしがや

2020年05月28日

NO.581 人生100年時代を迎えて 埼玉東部循環器病院 笹栗志朗

 人間って長生きするようになりました。明治、大正時代の日本の男性の平均寿命はなんと43歳、戦後、1951年に60歳、1971年に70歳、2013年に80歳と急速に寿命は延びています。ある研究では、2007年に日本で生まれた子供の半数が107歳より長く生きると推計されています。
 さてさて、そんな時代を迎えて私たちはどのような時間を過ごしたら良いのでしょうか。こんな計算もあります。平均寿命が65歳の時、定年は50歳、平均寿命が80歳になると定年は65歳、定年後の15年は自由に生きなさいということのようです。それでは100歳が平均寿命となると85歳まで働かなくてはいけないということになります。日本の労働人口が減って来ていることを考えると85歳定年も現実味を帯びてきます。
 時折、80歳を過ぎても、とてもお元気な方を外来でお見受けします。もちろん、病院にかかっているのですからどこか気になることがおありなのでしょうけど、いまだ仕事をしておられたり最近まで現役であった方が多いような気がします。働くために体に気を使うのか、体調を維持しているから働けるのか、いずれにしても長年使ってきた体の部品は消耗しているので手入れが必要ということになり、そのことに関心がおありのことだろうと思います。
 このような時代を背景に最近の医療におけるキーワードは「低侵襲性」という言葉です。外科で言えば、今までは大きく切っていた手術を、今は高齢の方でも諦めずに治療を受けられるよう、できるだけ小さな傷で、あるいは切らずに治すということに主眼がおかれています。これは外科に限らずどの診療科でも目指していることで、医療技術は日進月歩、医者もその流れについて行くのが大変な状況になっています。
 当院は循環器専門病院で、命を支える心臓、血管の治療を行っています。何十年も止まることなく打ち続ける心臓、そこから血液を運ぶ血管は、当然、年とともに傷んできます。大切なのは重大な事態を迎える前にそのことを未然に防ぐということであり、そのことに関心を抱くということになります。それが残された時間を楽しく元気に過ごすコツであると思います。

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