広報こしがや

2020年10月06日

NO.587 痔疾患について 宮本医院 岩瀬直人

 私は一般外科医で大学病院を辞めた後15年間肛門科を診療しております。
今回は痔疾患の話です。肛門の病気は皆さんご承知のように痔核(いぼぢ)、裂肛(切れぢ)が大半を占めます。
人間50年以上生きていますとほとんどの方が1回は経験している疾患だと思います。
痔核、裂肛の大半は外用剤等で症状が改善しますが、数週間で改善がみられないときは手術をお勧めします。
痔核は肛門内にできる内痔核と肛門外にできる外痔核があります。外痔核(血豆)のほとんどは外用剤等で治りますが、内痔核は外用剤等で治らないケースがあります。
 内痔核の手術は大きく3通りあります。それぞれ利点、欠点があるのでどの手術法が一番いいのかは断定ができませんが、排便時出血、脱出しても指で戻るぐらいであれば(内痔核の大きさにもよりますが)痛みの少ない硬化療法(薬を痔核に注入し痔核を固める方法)で十分治ります。2つ目はPPH法(器械で腸の一部を環状に切除する方法)で、こちらも痛みが比較的少ないいい方法ですが治療費が高いのが欠点です。最後に従来からある結紮切除法(メス、剪刀で痔核を切除する方法)です。再発率は一番少ない方法ですが術後は少なからず痛みを伴い数週間は仕事に支障が出ることがあります。
 次に裂肛についてですが慢性的な痛み、肛門が狭い方が手術適応になります。大半の方は裂肛部分を切除し、硬く突っ張る括約筋の一部を切除すれば治ります。術後の痛みは思ったより少ないです。
 最後になりますが痔疾患で一番問題なのが肛門出血です。鮮血であれば心配ないとよく耳にしますが、それは主観的な判断によるものなので思わぬ病気(がん等の悪性疾患)を見逃すことがあります。痔疾患があると便潜血反応が陽性に出やすいと考える方が多いと思われますが、実は痔疾患と便潜血反応陽性率との関連性はないとの報告もあります。怖さ、恥ずかしさはありますが短期間に数回の出血があれば一度は肛門科の医師の診察を受け、外用剤等で出血が止まらなければ大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。万が一、大腸がんが見つかったとしても出血のみの症状であれば、がんで命を落とすことは少ないと思います。一度思い切って病院へ行ってみましょう。

 

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