広報こしがや

2021年07月14日

NO.595 引きこもり 埼玉こころの在宅診療所 中島 淳

「引きこもり」という言葉は誰でも知っている言葉だと思います。厚生労働省は「引きこもり」とは「仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6か月以上続けて自宅にひきこもっている状態」と定義しています。
 引きこもりの原因には障がいや疾患などの生物的な要因でない場合もありますが、精神疾患が背景にあることも少なくありません。代表的な疾患としては統合失調症があります。統合失調症の症状は陽性症状と陰性症状に大きく別れます。陽性症状としては幻覚や妄想、陰性症状としては意欲の減退や感情の平板化を認めます。統合失調症は100人に1人ほどが発症すると考えられており決してまれな疾患ではありません。
 統合失調症の原因は明らかにされていませんが、ドーパミンの機能異常が存在すると考えられます。治療は薬物療法や心理社会療法などが行われます。薬物療法としては抗精神病薬がメインに使われ、認知行動療法や疾病教育などが並行して行われます。これらの治療により症状緩和し、社会生活を送ることを目標にします。
 しかし、実際に自ら統合失調症を疑い病院を受診する患者様は少数です。統合失調症は自分自身が病気であるという自覚を持ちにくい疾患です。そのため症状があり長年自宅に引きこもっている状態であっても病院を一切受診していないケースは少なくないです。一般的には未治療期間が長くなれば予後も悪くなると言われているため早期の受診が必要になります。
 ここでは引きこもりの原因のひとつとして統合失調症をあげさせていただきましたが、統合失調症以外でもうつ病、双極性感情障害、発達障害などの精神疾患が背景にある場合も多々あります。
 いずれにしてもまずは医師によるアセスメントが必要になりますので家族などのことでお困りの方はかかりつけ医に相談するようにしてください。

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