広報こしがや

2022年09月12日

NO.610 実は身近な甲状腺疾患 越谷くすの木内科 大原徳彦

 甲状腺は、首(のどぼとけの下の方)にある臓器で、甲状腺ホルモンを分泌しています。甲状腺ホルモンは人体のさまざまな器官に作用し、新陳代謝を活発にする重要な働きをしています。甲状腺の病気は、甲状腺ホルモンの分泌異常と、甲状腺自体の腫れに分けられます。
 甲状腺ホルモンが過剰になると代謝が活発になりすぎ、手の震え、どうき・頻脈、体温上昇、下痢、体重減少などの症状が出ます。バセドウ病や甲状腺炎などで引き起こされます。
 逆に甲状腺ホルモンが少なくなると代謝が低下し、むくみ、脱毛、体温低下、便秘、意欲の低下などの症状が出ます。よくある原因として橋本病が挙げられます。 
 ホルモン分泌異常の治療は、飲み薬でホルモンの量を調整するケースが多いです。ただ、バセドウ病などにおいて飲み薬が効かない、あるいは副作用で使用できない場合、放射線治療や手術なども検討されます。最終的にはほとんどの例で病気になる前の状態に戻すことができます。
 甲状腺の腫れについて、患者さん自身が気付いて受診されるケースもありますが、一般的には健康診断や首の超音波検査の際に指摘されることが多いです。
 腫れは甲状腺全体が腫れるものと一部が腫れるものに分けられます。
 全体的に大きく腫れてしまうものは甲状腺腫と呼び、良性・悪性で言うと良性のものが多いです。超音波検査で経過を見ながら、飲み薬で腫れを抑えたりする治療を行うこともあります。あまりに大きくなり周囲の臓器を圧迫するようなら手術で取ってしまう場合もあります。
 甲状腺の一部が腫れてしまう場合、腫瘍(できもの)によることが多く、こちらも良性・悪性で言うと良性が多いですが、悪性の腫瘍、つまりがんも存在します。超音波検査で変化を追いながら、時に細胞を採取して検査し良性・悪性を判定します。悪性と診断されれば手術による治療を行います。
 甲状腺の病気は、健診・ふだんの診察の際にホルモンの測定や首の超音波検査などをする機会が少なく、発見に至らないケースが多いだけで決して少なくはない病気です。何か気になる症状がございましたら掛かりつけの先生に相談してみてください。

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