広報こしがや

No.654 血圧から未来の自分を予測する 安城内科小児科クリニック 安城直史

 今回は高血圧について、皆様と知識の再確認ができればと考えています。
 約10年前、海外の大きな学会で非常にセンセーショナルな発表がなされました。収縮期血圧を140mmHg未満に治療をした約4600名と120mmHg未満に治療した約4600名を数年間にわたり調査し心筋梗塞、脳卒中、心不全、心血管による死亡の発生を確認していったものになります。結果は120mmHg未満のグループの方が明らかに上記疾患の発症率が低かったというものでした。その後、それに続くようにほかの大きな研究でも同じような報告がなされていきました。年齢によっての違いはあるのか、体力による違いはあるのか、さまざまな振り返りの検討がなされましたが、結論として、年齢などによらず血圧が低いグループの方が大きな病気になる率が低かったというものでした。
 血圧を測定することの意味について少し考えてみましょう。血圧計に上腕を通して圧力を測定します。血圧計には例えば140/90という測定値が出たとします。血管は閉鎖空間ですから、私たちは血圧計に表示された血圧を見ることで、心臓の中、脳の血管の中、腎臓の血管の中の圧力を間接的に見るということになります。血圧が高ければ、心臓にも、脳の血管にも、腎臓にも高い圧力が加わっているということになります。
 今回日本でも高血圧のガイドラインの変更があり、年齢、病気の種類、合併症にかかわらず、診察室では130/80mmHg未満、家庭では125/75mmHg未満にしましょうと変わりました。今回の変更はこういった10年以上前からのデータを汲んだものと思われます。
 自宅では血圧が低いです、とおっしゃる方もいらっしゃるかと思いますが、この診察室130/80mmHg未満という基準は診察室でもこのくらいにしなければならないという点で、高いハードルであると感じます。
 心臓病の観点からお話しすれば、心不全と診断された方の91%は、それ以前に高血圧を発症していたことが分かっています。これは言い換えると、心不全と診断された方のほとんどが、それまでの血圧管理が甘かった、とも言えます。
 最も心不全になりにくい血圧は? という答えも実は調査で分かっており、収縮期血圧が115mmHg以下とされています。もちろんこういった数値で語る際には、患者様個々に置かれている状況は異なるため、すべての方に無理やりは当てはめられないという点は留意すべきと思いますが、少なくとも診察室で130/80mmHg以上の方はリスクが高いということはエビデンスのあるデータですので、しっかりとご確認いただき、皆様の人生に活かしていただきたいと考えています。せっかく過去の先人たちが体を張って教えてくれているのですから、これを活かさない手はないと思うのです。
 血圧は高いが今は特に症状がないからどうでもいい、ではなく、急に起こるのが血圧に関係する病気の特徴ですから、今は何ともなくとも、将来急に起こるであろう心臓病、脳卒中などの血管病を予防するという考え方に変えていくことが重要です。
 健康診断、人間ドックが教えてくれているのは、それらを受けたその日までは大丈夫、というもので、健康診断の翌日に心筋梗塞になるということも理論上あり得ます。
 つまり健康診断や人間ドックは将来起こることの予測までは限界があるのです。その点で、血圧測定は自分の未来を予測できる重要な要素のひとつと言えるのではないでしょうか。血圧を適切に管理する、それだけで起こらない病気はたくさんあるのです。