広報こしがや

NO.632 子宮頸がんは予防可能な「がん」 佐藤産婦人科 佐藤智之

 医療には、病気を治す治療医学と、病気にならないようにする予防医学があります。今回は、子宮頸がんを予防医学から考えてみましょう。
 まず、予防医学には<一次予防>と<二次予防>とがあります。
 <一次予防>は、病気の発生を防ぐことを言い、例えば生活習慣・生活環境の改善、健康教育、ワクチンなどです。
 <二次予防>は、検診などで早期発見と早期治療で病気や障害の重症化(死亡含め)を防ぐことです。
 子宮頸がんは、HPVワクチン(性交渉を経験する前の接種が効果的)で予防できる唯一の「がん」であり、がん検診(細胞診)は死亡率減少効果が実証されていて、最も予防可能で予防しやすい「がん」と言われています。
 その理由は、子宮頸がんの特徴です。(1)原因が主にヒトパピローマウイルス(ハイリスク型HPV)の感染(性交)であること。(2)感染してからいきなり「がん」になるのではなく、前がん病変という異形細胞を経て、一部が数年~十数年かけて「がん」に変化するというプロセスで、この(1)・(2)の特徴からそれぞれに予防対策をすることができるからなのです。
 しかし、日本での子宮頸がんの現状は、年間約1万人以上が「がん」と診断され(特に20~40歳代の若い人に増加)妊娠・出産にも悪影響をもたらしています。そして約3,000人がお亡くなりになっていて、発生率・死亡率ともにいまだ増加傾向です。HPVワクチンの接種率の高い欧米諸国ではかなり高い感染予防効果が確認されていますが、日本では諸外国と比べ接種率は著しく低い状態が続いていること、がん検診の受診率も国際比較でみると欧米は受診率80%以上に対して、日本は全国平均で約35%程度にとどまり低い状態であることが原因とも言えます。
 それぞれの市区町村で、HPVワクチンは対象年齢者に定期接種(公費)が、そしてがん検診も毎年実施されています。
 最後に、子宮頸がんは予防可能な「がん」です。一次予防で原因ウイルスの感染自体をブロックし病気にならないこと。二次予防で重症化を防ぐことができます。
 大切なことは、病気の特性を理解し予防医学対策をすることです。ご自身と大切な人の健康を守りましょう。