広報こしがや

No.389 脊柱管狭窄症について 松田整形外科 松田 繁三

脊柱管狭窄症とは背骨内の脊髄せきずいが通っている管(脊柱管)が狭くなり神経が圧迫された状態をいいます。症状は、①歩行時の足の痛み(特にふくらはぎ外側)、②しびれ、③脱力感、④腰痛などです。しばらく歩いていると症状が悪化し立ち止まり、休むとまた歩けるのが特徴です。これを間欠性跛行はこうといいます。 高齢化による脊椎せきついの変形や脊椎間の靭帯じんたい肥厚が原因ですが、生まれつき脊柱管の狭い人もいます。70歳前後で発症しますが、生まれつき狭い人は中年頃から症状が出ます。下肢の血行障害でも同様の症状が出ますので、鑑別診断が重要となります。 治療はまず保存的治療を行います。骨盤牽引けんいん、温熱、マッサージなどによる理学療法で脊柱管の一時的な開大効果を期待します。内服薬には圧迫されている神経の血流を促進する薬や末梢まっしょう神経障害治療薬などがあり、痛みがひどいときは痛み止めを用います。コルセットをつけると症状が軽減する場合もあります。症状が悪化して理学療法や薬で効かない時は硬膜外ブロックを行います。これは脊柱管内に薬剤を注射する方法です。ブロック注射は患部に直接針を刺しますので、刺し方によっては、かえって足がしびれたり痛くなったり、頭痛が出る場合もあります。専門的にブロックを行っているところで実施されることをおすすめします。 これらの治療をしても次第に歩けなくなり、日常生活に支障を来す場合は手術を検討します。手術は狭い部分の背骨と肥厚した靭帯を削り脊柱管を拡げる手術が一般的で、術後2週間前後で退院が可能です。背骨の不安定性やすべり症を併発しているときは固定術を併用することがあり、通常1~3カ月入院します。術後合併症には、創感染、静脈血栓症、神経損傷による下肢麻痺まひなどがありますが、頻度は高くありません。適切な時期に適切な手術をすると高齢者でも快適な生活を営むことが可能となりますが、長期間足のしびれや麻痺を放置しておくと手術をしても症状が良くならないことがあります。手術をするかどうかは手術を受けた場合のメリットとその危険性を比較検討して決めることが肝要です。