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NO.635 元気に歩きましょう。―人生100年時代と ロコモティブシンドロームについて― 越谷慶友整形外科 リウマチ科 小岩政仁

 日本は世界の中でも最も長寿の国の1つになりました。つい先日、厚生労働省より2023年度の平均寿命の発表がありました。
男性は81.0歳、女性は87.1歳と世界で有数の長寿国になりました。この成果は今までの国民の皆様方の努力によるものであり、行政と日本の医療がともに協力して実を結んだものと考えます。
  さて質問です。この平均寿命のうちで健康で元気に自立して生活ができるのはどのくらいの期間でしょうか?
 2016年に厚生労働省が発表した結果では、男性72.1歳まで、女性は74.7歳までと平均寿命よりかなり低い年齢でした(これを健康寿命といいます)。つまり平均寿命まで、何らかの人の介助を受けながら寝たきりに近い状態が、男性は8.8年間、女性は12.3年間も続くことになります。この期間は世界のほかの国々と比較して日本はかなり長いそうです(アメリカ8.0年間、イギリス7.6年間、ドイツ6.9年間)。この寝たきりの期間は、ご本人、ご家族、そして国や経済にかなり大きな負担になります。今後人生100年と言われる時代に大きな問題となります。
 何が寝たきりにしているのでしょうか? 原因として(1)力が弱くなった(サルコペニア)、(2)元気がなくなった(フレイル)、(3)骨が薄くなって弱くなった(骨粗しょう症)など、体の運動する部分(運動器)が弱った状態(ロコモティブシンドローム)の問題が多いです。
 そのきっかけに、骨粗しょう症があり、そのために転倒による骨折を生ずることが大きな原因(14パーセントに及ぶ)とされています(昭和大学 永井隆士先生より)。また町田文人先生によると骨折をしたときに80パーセントの方が骨粗しょう症の治療を何も受けていなかったとのことです。これでは寝たきり予備軍といわれてもしかたがありません。健康寿命に達するまでに準備しておく必要があります。具体的方法として2つあります。(1)よく運動をする習慣を持つ。例えばよく歩く。毎日30分は最低限必要です。(2)骨粗しょう症の治療を早くから開始することが大事と考えます。
 そのために足腰に不安を覚えたらさっそく整形外科の外来を受診しましょう。