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NO.636 糖尿病連携手帳をご存じですか? 南越谷内科クリニック 中野智紀

 テレビや新聞などで名前を見ない日はないと言えるほど糖尿病に関する情報はあふれています。
正確には2型糖尿病と呼ばれ、生活習慣が関連する高血糖を特徴とする代謝の異常を示します。そのため血糖の値に話題が集中しがちですが、糖尿病の治療で最も大切なのは、合併症(ここでは併存症を含みます)を管理、予防し、将来にわたって私たちにとって当たり前の暮らしを守っていくことです。
 合併症とは、(1)脳卒中や心筋梗塞など急性に発症し生命に関わる動脈硬化に関連した病気、(2)失明や腎不全による透析の導入、足の切断など、(3)認知症や骨粗しょう症、サルコペニアと呼ばれる筋肉量の低下などが招く要介護状態、(4)免疫の低下に伴う肺炎などの感染症、(5)糖尿病を持つと発症率が高まることが知られている悪性疾患や慢性心不全、肝臓病などを早期に見つけて治療に結び付けることなどです。糖尿病治療は大変複雑ですね。これら合併症の予防のためには高血糖と同様に血管を痛める血圧や脂質、喫煙などを一括して管理していく必要があります。このように糖尿病の治療は非常に多岐にわたるため、限られた診察時間ですべてに目を配ることは難しいものです。また、初期には自覚症状に乏しく、治療がマンネリ化していることも診察室ではよく見受けられます。
 その際、役立つのが糖尿病連携手帳(以下、糖尿病手帳と呼びます)です。糖尿病手帳は、専門医や患者団体が協力して作成した全国共通の手帳です。前述の合併症の予防のために最低限必要な検査や治療が整理された状態で示されており、それらの空欄を一つ一つ埋めていくことで患者自身でも実施を確認することができます。
 万が一、救急搬送された際にも、ふだんの状態を病院の医師に正確に伝えることができます。この糖尿病手帳にお薬手帳を加えれば、手持ちのカルテとして役立てることができるでしょう。
 糖尿病手帳は日本糖尿病協会から無料で配布されています。ぜひ健康診断で指摘を受けたり、糖尿病の治療を行っている方にはご活用いただきたいと思います。