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NO.645 糖尿病や肥満の人への 差別・偏見がない社会へ 南越谷健身会クリニック 周東佑樹

 糖尿病とは、血糖値が高くなることによって全身の血管にダメージを与え、多臓器が障害されてしまう病気です。
初期は症状がなく気付きにくいのが難点で、進行すると動脈硬化による心筋梗塞・脳梗塞など命に関わったり後遺症を残したりする重大な疾患や、網膜症による失明、腎不全による透析導入、神経障害性疼痛による苦痛を引き起こしてしまいます。
これらの合併症を防ぐために治療が必要であり、臓器障害が進行する前に健康診断などで採血・尿検査を受けて早期発見し、異常を指摘されたらきちんと医師に受診し早期治療を開始することが重要です。
 糖尿病をもつ人は日本に約1,000万人いるといわれています。日本人は血糖値を下げるホルモンであるインスリンの膵臓からの分泌が遺伝的に少ないと知られており、過食・肥満がなくても高血糖になってしまう方も多いです。また最近の研究で、遺伝子や腸内細菌などの体質により過食しやすい人や太りやすい人がいることが分かってきており、肥満自体も自己責任ではないとされています。糖尿病や肥満の人が「だらしない、自己管理能力がない人間だ」などという「特定の属性の人に対する負の烙印」のことを「スティグマ」といいますが、このような誤った認識で、糖尿病や肥満の人には社会から厳しい目が向けられがちです。就労上の不当な扱いなどの社会的スティグマをなくすために各学会も活動しており、「糖尿病」という病名自体もイメージが悪いため、病名を変更する動きもあります。
 そうはいっても、きちんと治療をしないと前述の合併症でご自身が将来つらい思いをしてしまいます。まず医師に受診し、基本である食事・運動の見直しを受け、十分に改善しない場合は薬の処方を受けましょう。ここ15年ほどの糖尿病治療薬の進歩はめざましく、血糖値を下げるだけでなく低血糖を起こしにくい・肥満を改善させる・心臓や腎臓などの臓器保護効果があるなどの付加効果を考慮し患者さんごとに選択します。糖尿病は自分の責任だから、医療によって治療する対象ではないという「自己」スティグマも持たず、進歩した治療を受けて糖尿病による悪影響が少ない人生を過ごしてほしいと思います。