広報こしがや

No.421 抗不安剤の依存症について 若葉クリニック 池田 恭子

抗不安剤という呼び名は聞きなれなくても、安定剤と聞くと「ああ、それか」とわかる人も多いと思います。抗不安剤は精神神経科、心療内科はもとよりそれ以外の多くの診療科において、患者さんの症状と不安との関連性が考えられる場合に処方されます。結果として、期待通りに効果が出る時とそうでない時がありますが、効果を自覚された人は助けられたという実感を得ることになります。このこと自体なんの問題もありませんが、時に困ったことが起きます。 不安やそれに伴う動悸どうき、めまい、頭痛、息苦しさ、またしびれなどが軽くなったり・消えたりした時、その人は助けられたと強く感じ、その薬がなくてはならないという気持ちになることがあります。場合によっては薬から離れられなくなったり、中止することを怖れるようになり、それが依存という状態です。依存には大量の薬を長期間服用していて、急に中断した時に、頭痛、ふるえ、めまい、吐き気などを起こす身体依存と、特定の抗不安剤を強く希望し、さまざまな方法を使ってその薬を求めるという精神依存とがあります。その結果、特定の薬にこだわるあまり複数の医療機関を受診したり、紛失したなどと言ってまた薬をもらう場合も起きます。そして、医師が薬を変えたりすることを拒否することもあります。このような状態は薬の種類、用量、期間そして服用する人の性格なども関係しています。こういうことは実際はそう多くはありませんが、症状がよくなっていても服薬していたほうが安心ということから、長期に服用を希望する患者さんが比較的多くみられます。 一定の時期が過ぎ症状が改善し安定してきた時には、減量したり中止したり、また必要があれば他の薬に変更することも考えなければなりません。抗不安剤のなかでも比較的ゆっくり効き、依存の起きにくいものもあります。またある種の抗うつ剤(うつ状態に対する薬)で抗不安剤の代わりをしてくれるものもあります。今のところ大きな社会問題とはなっていませんが、医療以外に使われたり、乱用ということを考えますと、個人の問題であると同時に今後の社会的問題になると考え、充分な注意が払われるべきです。 終わりに、医療関係者の配慮も当然必要ですが、患者さんも医師の指導、指示をよく聞き治療方針を理解していただきたいものです。