No.436 潰瘍性大腸炎 ひまわりクリニック 朝倉 隆晴
ゆるい便や下痢が続き、時々、赤黒いような色の血に白っぽい粘液が混じり、締め付けられるような痛みがあったり、何回もトイレに行きたくなったりする場合、それはただの下痢ではない危険があります。潰瘍性大腸炎をはじめ、特殊な感染性腸炎やがんなど色々な病態が隠れているかもしれません。自己判断は危険です。まずはかかり付けの先生に相談し、専門の医師に大腸の検査を依頼してもらいましょう。
潰瘍性大腸炎は生活の欧米化に伴って最近急速に増えている病気です。まだ米国の100万人には及びませんが、日本でも20年間で10倍になり、約8万人弱の患者さんが登録されています。さらに毎年5000人ずつぐらい増加しています。10代後半から30代の若者に多く発症し、男女差はありません。直腸や大腸の粘膜に潰瘍やただれを連続性にきたす原因不明の炎症性疾患で、治りにくく、再発を繰り返すため、厚生労働省から特定疾患(難病)に指定されています。
多くは内科治療で良くなりますが、長期の経過では再発しやすいため、薬で症状を抑え、食事にも気を配る必要があります。内科治療でよくならない場合や急激な経過をとる場合には、手術になることもあります。大腸以外にも結膜炎や虹彩炎、関節炎、口内炎や皮膚炎、尿路結石症などを合併することもあります。その場合には、眼科、整形外科、皮膚科、泌尿器科の先生と連携して治療します。
脂の多い食事や遺伝的な因子が複雑に絡み合い、自己免疫反応の異常が発病の原因になると推測されていますが、詳しい事は不明です。喘息やアトピー性皮膚炎などアレルギー体質の方に発病しやすいという報告もあります。特殊な菌(C.Barium 菌)が原因となっているとした除菌療法なども研究されていますが、効果はまだ確認されていません。薬物治療の中心となるペンタサなどは合併症の大腸がんを予防するとの報告があります。症状が落ち着いていても長期に飲み続けるべきでしょう。
症状が落ち着いている時期には厳格な食事制限は必要ありません。しかし暴飲暴食・バランスの崩れた食事・アルコールの過飲・刺激物は再燃の原因になります。炎症が強い時期は高たんぱく・高エネルギー・低残渣・低脂肪を基本として、消化吸収の良い食事を心がけることが大切です。