No.448 甲状腺は病気の名前? 駅ビル医院せんげん台 井上 健
甲状腺と言うと、病名だと勘違いしている人がたくさんいます。甲状腺は胃や肝臓と同じように臓器そのものの名前です。甲状腺にも他の臓器と同様多くの病気があるため甲状腺が悪いと言われただけでは、何の病気かはわかりません。
甲状腺の病気は大きく分けて2つあります。甲状腺から出る甲状腺ホルモンが増える、または減るという量的な変化と甲状腺の形の変化の2つです。病気によっては、これら1つだけの異常や2つの変化が同時にみられる異常があります。
甲状腺ホルモンが増えるのは甲状腺機能亢進症で、そのほとんどがバセドウ病です。
ホルモンが減る甲状腺機能低下症でいちばん多いのが、橋本病です。一時期だけ甲状腺ホルモンが高い値を示す病気に亜急性甲状腺炎(痛みが伴う)と無痛性甲状腺炎(痛みがない)があります。
形の変化では甲状腺全体が腫れるびまん性甲状腺腫とシコリが触れる結節性甲状腺腫があります。甲状腺が全体に腫れるものには、バセドウ病、橋本病、単純性甲状腺腫、無痛性甲状腺炎などがあります。シコリが触れる場合、その多くは良性ですが、癌の場合もあるということを忘れてはなりません。
これらを診断する場合、甲状腺ホルモン量や甲状腺に関連する抗体については血液検査を、シコリについては超音波検査をすれば、そのほとんどが診断できます。必要に応じて甲状腺の細胞を顕微鏡でみて診断します。
甲状腺の病気は男性より女性にたいへん多く見られます。病気によっては10倍~20倍多く、成人女性の7人に1人は甲状腺に病気があると言われています。また甲状腺の病気は恐いという印象を持つ人がいますが、大部分の病気は専門医の診療を受けていれば、恐いものではありません。合併症の点からは糖尿病や高血圧症よりも、病気のコントロールは容易です。