No.451 中高年の難聴(その疾患と補聴器の使用について) 井上耳鼻咽喉科 井上 良江
補聴器は薬物治療や聴力改善手術によって聴力が改善しない場合や、騒音、加齢により聴力が低下して日常生活に不自由を感じるときに使用するものです。まず耳鼻科医の診断を受けてください。診断を受けずに補聴器を使用すると、①より良い治療法を見過ごすことになる。②重大な疾患を見逃すことになる。③耳の病気が悪化する。④使用してはいけない疾患であった。ということが起こることがあります。
まず、難聴をきたす中高年の疾患について説明します。
(1)慢性中耳炎小児期の急性中耳炎が完治せず鼓膜の穿孔が閉鎖しないために、難聴と耳漏を繰り返します。治療は、難聴に対しては手術(鼓膜形成術)、耳漏に対して抗生物質が有効です。
(2)真珠腫性中耳炎中耳に真珠腫という垢様物質がたまる病気です。その真珠腫が徐々に大きくなって周囲の骨を破壊し、難聴や顔面神経麻痺、髄膜炎などを引き起こすこともありますので、手術(鼓室形成術)が必要です。
(3)突発性難聴多くは片側性で、突然の難聴、耳鳴り、耳がつまった感じが出現し、めまいを伴うこともあります。原因は内耳の循環不全ともウイルス感染ともいわれ、早期の安静、ステロイド薬、循環改善薬などの使用により改善されることが期待されています。
(4)メニエール病発作性回転性めまいと片側の難聴、耳鳴りで発症し、反復性です。内耳のリンパ液の代謝障害が原因とされています。治療は、安静、減塩、利尿薬、ステロイド薬、循環改善薬が有効です。
(5)騒音性難聴工場など長期間の騒音による障害で徐々に起こり多くは両側性です。
(6)加齢性難聴全身に起こる年齢的変性の一環としての聴力低下ですが、個人差がかなりあります。
(7)他に外耳道の耳垢、異物で聴こえが悪くなっている場合には除去することにより良くなります。
つぎに、補聴器を合わせる手順について説明します。まず装用する耳(右耳、左耳、両耳)を決め、その人の聴力、生活環境に合った補聴器を選びます。補聴器が決まったら、雑音を抑えるための調整、心地よく聴くための調整をします。そして実際に補聴器をつけた状態で音、言葉の聴こえの検査で確かめます。補聴器はいつも使うものなので、耳、補聴器の悪化がないかどうかの定期的な検査が必要です。