広報こしがや

No.461 皮膚の真菌について 和光クリニック 坂下 さゆり

人間の皮膚で病気を起こす真菌といえば俗に「水虫」とよばれる「足白癬」がよく知られていますが、白癬菌は足だけでなく全身の皮膚に感染して症状を起こす可能性があります。頭ではフケがひどくなったようになり、体幹、四肢、顔面、股部ではかさかさした淡紅色の、ときには環状の病変が現れ、爪では白く濁って厚くもろくなる症状がよくみられます。 また最近、日本では今までみられなかった種類の白癬菌による体部白癬や頭部白癬が柔道やレスリングなどの格闘技競技者の間で流行しており注意が必要です。乳児の一見普通の「おむつかぶれ」の原因がカンジダ菌という真菌のことがあります。白癬菌と違ってカンジダ菌は常在菌(ふだんは人間と共存している菌)で、何らかの原因で菌が異常に増えると「カンジダ症」になります。症状は皮膚の赤みや皮剥けが多く、股部やわきの下、手や足の指の間、爪でよくみられます。免疫力の弱い乳児や高齢者、糖尿病などの基礎疾患のある患者さんは注意が必要です。 一方、カンジダ菌と同じく常在菌である癜風菌(マラセチア属)は脂っぽい環境を好む真菌で、多くは健康な若い成人の皮膚や毛孔で増殖して病気を起こします。皮膚の症状は、いわゆる「汗っかき」の人の胸や背中の(ときに広範囲の)シミのような変色です。シミの色は薄茶色と白っぽいものの2通りで、それぞれ黒色癜風、白色癜風とよばれます。病変が毛孔の場合は胸や背中のニキビのような症状になりますが、これは抗真菌剤による治療の必要な病気です(マラセチア毛包炎)。また癜風菌(マラセチア属)は頭皮のしつこいフケのような症状(脂漏性皮膚炎)の原因のひとつとして注目されています。 以上が、日常的によくみられる真菌による主な皮膚の症状ですが、これらの症状はまったく別の病気である「湿疹」と見分けが難しいことがあります。皮膚の病気の原因が真菌かどうかは、病変部の皮膚や変色した爪に菌がみつかるか顕微鏡で検査して調べることができます。