No.471 肺炎球菌ワクチン けやきクリニック 会田 邦晴
肺炎は、日本人の主な死亡原因では第1位が悪性新生物(がん) で、心臓病、脳卒中と続いて第4位の疾患です。また、年々肺炎による死亡者数は増加傾向にあり、肺炎による死亡のうち65歳以上の高齢者が約95%を占めています。肺炎球菌は病院外の社会生活上で発病する肺炎の約30%を占める原因菌であり、高齢者の重症肺炎では約50%を占めています。その他に髄膜炎、敗血症、中耳炎や副鼻腔炎などの原因菌でもあります。
肺炎球菌ワクチンは、この肺炎球菌に対する予防ワクチンです。肺炎球菌ワクチンの接種により肺炎の予防のみならず、肺炎が重症化するのを抑制する効果も期待できます。対象としては肺炎球菌による重篤疾患に罹患する危険が高い人となっています。具体的には肺炎の罹患率の高い高齢者や、心血管疾患、喘息などの呼吸器疾患、糖尿病、腎不全などの基礎疾患を有するようなハイリスクの方々などが接種を推奨されています。最近では抗生剤の効きにくい肺炎球菌が増加傾向にあり、また平成21年に新型インフルエンザ感染が流行しましたが、このようなウィルス感染によって障害された鼻腔・気道粘膜に肺炎球菌が付着し肺炎を併発しやすくなりうるので、ハイリスクの方は肺炎球菌ワクチンの接種を考慮されてはと思います。ただ、肺炎球菌ワクチンは全ての肺炎を予防するものではないことを注意してください。
肺炎球菌ワクチンは1回の接種により少なくとも5年間は有効で、日本では今までは2回目の接種は副反応が危惧され禁忌とされていましたが、現在は1回目の接種後5年たてば2回目の接種が可能の接種は全例に接種するという意味ではありません。医療機関でご相談ください。
なお、小児の肺炎球菌感染による髄膜炎、敗血症、肺炎、中耳炎に有効である小児用肺炎球菌ワクチンも接種が行われています。対象は2カ月以上9歳以下ですが、肺炎球菌の重症感染は約半数が0歳代で起こりますので、できるだけ早い時期から接種を開始するのが望ましいと思われます。アメリカでは接種が開始されてから肺炎球菌の重い感染症がわずか2%に減少したといわれており、大きな効果を上げています。接種回数は開始年齢で異なりますので医療機関にお問い合わせください。