広報こしがや

No.484 音響外傷 青木産婦人科耳鼻咽喉科心療内科 青木 古尚

今回は、「音響外傷」という病気について説明します。聞き慣れない病名かもしれませんが、実は意外に身近なもので、他人事ではない病気です。大きな音が原因となり耳鳴りや難聴、耳の閉塞感などの障害や異常を来たすという病気で、音(騒音)が街中にあふれている今、知らず知らずにこの病気にかかってしまう事もあります。大きな音と言っても様々です。花火のような瞬間的な大音響もあれば、パチンコ店やディスコや音楽ライブの様に継続して鳴っている、ある程度大きな音も原因と成り得ます。 まず、瞬間的な大音響により起きる「急性音響外傷」について説明します。近距離での銃声や発破工事などの爆発音により引き起こされ、鼓膜が破れてしまう事もあります。また、めまいを伴う事もあります。ダメージを受けてしまった内耳(鼓膜よりももっと奥に在り聴覚や平衡感覚をつかさどる大事な器官)をステロイド剤の投与などで治療します。予防法は耳栓をしておくのが確実で簡単です。しかし、ほとんどの方は日常生活で銃声や発破音を耳にしませんのであまり注意しなくて良いでしょう。 街中を歩いていても電車に乗っていてもイヤホンやヘッドホンを装着している方をよく見かけます。音が漏れる位の大音量の方もいます。これらが次の病気「騒音性難聴」の原因の一つです。自らの好きな音楽でも耳障りな騒音でも、その音が強ければ強い程に騒音性難聴にかかりやすくなってしまいます。ゲームセンターやカラオケ店でもそうです。この病気のやっかいな点が「病気になった事に気が付きにくい」という事です。内耳へのダメージがそれ程大きくなければ一時的な聴力低下で済みますが、繰り返しダメージを受け続けると治す事の出来ない回復不可能な状態になってしまいます。そうなってしまって初めて「何か耳が変だ」と自覚する事が多いのです。耳の異常を感じたら早めに耳鼻科を受診する事が重要です。しかし、音量を抑え長時間聞かないようにして耳を休ませる、これが騒音性難聴にならない為の最も大切な極意なのです。